滝壺のダンジョン、それはボルビール王国のほど近くにあるダンジョンだ……王国の近くにあるというのにその難易度の高さや、入るたびにダンジョン構造が変わるという奇妙な特性ゆえにその開拓はほとんどされていないという。
「ここが俺の初めてのダンジョンか」
「勇者様、気合入れていきましょうね!!」
「はいっ!!姫様!!!」
俺は大きく息を吸って吐く。まさかこんないきなりダンジョンに挑むことになるとは思わなかった。だけどずっと準備はしてきたんだ……
俺は旅立ちの時セラリスに『はいっ、これ御神木削って作ったんだ。勇者様の初めての武器にどうぞ』と言われてもらった木刀を撫でた。
「セラリス、俺の初めて……見守っててくれよ」
「セラリス?どなたですか?」
「俺の幼馴染です……姉ちゃんみたいなもんでいろいろ気を回してくれた女の子なんですよ……そいつと世界を必ず平和にするって約束したんです。だから、行きますよ!!」
滝壺のダンジョンはその名の通り滝壺のすぐ裏にあるダンジョンだ。俺は熱き血潮を滾らせてダンジョンへの階段を下りて行った。
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キュンキュンキュンキュン
「ユウユウったら姫様にまで私との愛情を熱弁するなんて……本当に私のことが好きなんだね。分かってるよ!!
ユウユウの初めてのダンジョン攻略全力で見守るから安心してね!!!」
そうしてユウユウ達の後を追って私もダンジョンの中に入っていく……
ほうほう、これがダンジョンか。初めて見たけれど何だか無機質でつまんない場所だなぁ。滝壺が近くにあるせいなのか湿気が凄いし、石造りの四角い通路にこけがむしてる。
そりゃ、きらびやかな空間だとまでは思ってないけれどあんまり長く居たい空間じゃないね。
チャポチャポと水に濡れた床をユウユウたちは歩いていく。せわしなくキョロキョロとして辺りを警戒しているようだ。
「勇者様、そんなに気を張っては最後まで持ちませんよ」
「すいません……でも俺ダンジョン初めてなのでどうしても………何かコツとかってあるんですかね?」
「そうですね……少々お待ちください」
すると姫様はポーチの中から大きめの白くて厚い紙と何かの液体を取り出した。
「これは超次元バッグと言って中にどんなものでも入る優れものなんですよ。そしてこの紙の上にこの液体を垂らすと」
じゅわぁっと紙に液体が染みこんでいき通路の地図となった。「おおっ」とユウユウが驚きの声を上げる。
「ふふふどうですか?ダンジョンの液です。今いる階の情報が手に入る魔法がかかっているんですよ……にしても思った以上に複雑ですね……」
確かにこれは相当に面倒な迷路になっている。地図がなければ間違いなく迷子になってしまうだろう。まぁ万が一ユウユウが迷子になったら私が出口までの最短ルートができるよう壁を滅するので問題はないんだけどね。
「それにどんな罠やモンスターがいるかまではこの地図では分かりません、なのでしっかりと注意をして……」
「ゴワァァァ!!!!」
「ひゃっ!!??」
突然叫び声が上がった。見ると2メートル以上はありそうな巨躯を持つモンスターが鋭い牙を輝かせていた。
「モ、モンスター!!??」
姫様の絶叫を聞き終える前にユウユウが木刀を構えた。
「結構強そうだが……姫様任せてください。勇者の力を見せてやりますよ!!」
「勇者様」
ユウユウが凛々しい瞳をモンスターに向け、「うおぉぉぉぉぉ!!!!」と雄々しい叫びをあげて向かって行った。
ガコッ
「ん?」
そして何かに引っ掛かった。なんだと私が首を傾げているとユウユウの目の前に勢いよく網が襲い掛かってくる。
「うおっ??」
勢いは収まることなくユウユウの後ろで待機していた姫様まで巻き込み網は壁にめり込んだではないか。
「嘘だろ……くそっ!!」
「こんな罠が……どうしましょう」
不味い、ユウユウの動きが取れなくなっちゃった………いや、それだけならいい、よくはないけれどそれだけならいい。一番不味いのは………
モニュンモニュンッ
「ひゃんっ。勇者様、その……あまり手を動かさないでくださいまし」
「すっ、すいません……そう言うつもりでは」
ユウユウの腕が綺麗に姫様のおっぱいに挟み込まれていることだよ!!むにゅんむにゅんなってる!!
ああ、どうしよう……このままじゃ………ユウユウの逞しい腕が私以外のおっぱいに汚されちゃう!!!
大きなモンスターがユウユウ達に近づいているのを忘れて私は心の中で絶叫したのであった。
あのおっぱい、滅したろっか!!??