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幕間1 コーデリア

獣人の生態

 皆さんこんにちは。


 本日はお忙しいなか、講演にお集まり頂き、誠にありがとうございます。


 さて、まずは自己紹介から始めさせて頂きます。


 私の名前はコーデリア・ブラックモア。


 アメリカ生まれですが、ドイツの国立科学研究所にて、獣人の生態について五年前より研究をさせて頂いております。


 専門は霊気の研究ですが、発生機序については未だに解明の糸口も掴めない状況です。


 そこで、本日は霊気の効果と対策についてお話したいと思います。


 霊気は魔法と違い、人間には使うことが出来ず、それでいて全ての獣人が持つ能力です。


 おかしいと思いますか?


 獣人に出来て人間に出来ないなんて。


 しかし、これは自然界にはよくある事です。コウモリは超音波を発生させ、聞くことが出来ますが、人間には出来ません。電気ウナギは発電しますが、人間には出来ません。


 獣人の証言によれば、生まれつき使えるもので特に理由を意識した事はないそうです。


 さて、霊気の効果については身体能力を高めるとしか証言を得られませんでした。しかし、これまでの百年の戦いの記録を分析すると、決してそれだけの能力ではない事がわかります。


 小銃で戦車を破壊した獣人。


 離れた所から、剣で斬りつけてきた獣人。


 ロケット弾の直撃を受けて、無傷どころか服に汚れすら付かなかった獣人もいます。


 以上の事から、彼等の使う霊気とは、魔法のマナと同じく何らかのエネルギーが存在し、そのエネルギーは身体だけでなく様々な物質の強度を高める事が出来るほか、そのエネルギー自体が硬質化して剣や鎧にもなると推測されます。


 では、どう対抗すればいいのか?


 霊気に対抗する手段。それは大きく分けて三つあります。


 一つ目は、霊気でも防げない、強力な兵器を作ること。


 二つ目は、霊気を無効化する事。


 この二つは、長年連合国が研究開発を続け、一定の成果を収めています。


 今まさに、獣人の侵攻を防げているのがこれらのおかげなのです。しかし、現在の技術では防ぐだけで精一杯。このままでは戦争はいつまでも終わりません。


 そこで三つ目、人間も霊気を使う事です。


 先程私は言いました。人間には使えない。それは普通の事だと。


 しかし、コウモリも電気ウナギも、専用の器官を持ち、特殊な能力を発揮する仕組みが解明されています。人間は、自分の肉体で超音波や電気を発生させることは出来ません。でも、超音波や電気を発生させる道具を作り、扱う事が出来ます。


 獣人に備わった、霊気を扱う能力の仕組みが解れば、あるいは人間も使えるようになるかもしれません。


 その為にも、獣人の生態を研究する事は重要なのです。連合国の、そして人間の未来は、獣人の生態研究にかかっていると言っても過言ではないのです!


 それでは、これから私どもの研究によって得られた成果――霊気使用時の獣人の身体機能変化――について、お話いたします。

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