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ー鼓動ー14

 確かに今の和也の話は一理あるのかもしれない。


 雄介があの日あの青空の下この島へと帰還してくれた。


 今までの俺はそんなに素直じゃなかったけど本当に俺は雄介の事が好きになったから、俺は『好き』の最上級であろう言葉で『愛してる』って事を雄介に伝えてからだ。


 そう和也の言う通り俺がかなり雄介に対して素直になれてきたきっかけみたいなのは、それを言ってからと言っても過言ではないのかもしれない。


 ……ま、いいか。


 そういう事、今は気にする事でもなくなって気がする。


 そしてみんなで診療所の準備を始める。


 いつもは四人でだが、今日は六人でっていうだけあって、いつもより準備を早く済ませられたようにも思える。


 そしていつもより早く八時四十五分には扉を開けるのだ。


 確かにこの診療所の開院時間というのは九時なのだが、その前から来てる患者さんもいるのだから、この炎天下の中で待たせる訳には行かず準備が早く出来れば開けておくのがこの診療所での暗黙の了解なのかもしれない。それに熱がある場合この炎天下の中で待たせる訳にはいかないのだから。


 それでも九時位まではロビーの方で待ってもらう事にはなる。それでもまだ全然外で待ってもらうよりかはエアコンの効いた部屋の方はいいだろうと思っているからだ。


 すると今日は診察予定だったのか、蒼空とお母さんがこの診療所へと訪れていた。


 それを雄介が出迎える。


 そう今日は診察室の方は朔望達に任せているからなのかもしれない。要は今日の俺達というのは診療所内でフリーで居る状態でもある。


 ま、それでも俺達は一応、白衣は着てるんだけどな。


「足の方はもう大丈夫なんか?」

「うん! もう、大丈夫!」

「それなら、良かったわぁ。でもな、今日の俺は色々とあって診察室に居らんけど心配すんなや、他の優しいセンセが診てくれるからなぁ」


 そう言って雄介は蒼空の頭を撫でるのだ。


「そうなの!?」


 と蒼空は不満そうな表情をしながら雄介の事を見上げている。


「ま、まぁ……俺じゃなくても大丈夫やって、蒼空が俺の事を慕ってくれるのは嬉しい事やねんけど、そのセンセやって優しいんやで」


 そう雄介は蒼空に向かって笑顔を向けていた。確かに俺に向けてくれる笑顔も好きだけど、こうやって患者さんに向けて笑顔を向ける雄介も好きな方だ。


「ホントに!?」

「ホンマやって」

「じゃあ、俺は雄介の事を信じる!」


 そう言う蒼空。


 ホント、雄介って凄いんだなぁ。


 って改めて思う俺。

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