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ー鼓動ー15

「うん、ありがとう。 ほな、まだ時間じゃないし、ここで待っておってなぁ」

「うん!」


 ……そう考えると雄介に小児科を任せて良かった。


 とさえ思えて来る。


 まぁ、今回、蒼空の場合には小児科分野ではなかったのだけど、雄介はそこを十分に承知して蒼空に治療してくれたのだからいいかな? って思う。


 ま、要は雄介は子供担当で俺の方は大人担当っていう所だからだ。


 まだまだ毎日数人しか来てない診療所だけど、一ヶ月前に比べれば全然来てもらっている方だと思うのだ。


 時間になると和也も裕実も患者さんの名前を呼び出し始めていた。


 病院みたく大きくはないのだから、患者さんを呼び出す時にはマイクなんか使わずに声で呼ぶシステムだ。寧ろ小さな診療所なのだから逆にマイクで呼んでしまうとうるさい位になってしまうのだから声で呼ぶとか患者さんの事を覚え始めたなら直接、患者さんの前に行って呼ぶのもありなんだよな。


 とりあえず雄介も俺も時間になってからは診察室へと向かう。いや俺は診察室の方に行ったのだけど、ここに雄介の姿は見当たらないのかな?


 だが今日の俺というのは、朔望と歩夢の様子を見ているだけでもある。


 俺は雄介の診察室と自分の診察室の合間に立って二人の様子を見ていた。


 するとさっき雄介と話をしていた蒼空が診察室へと入ってくる。


 朔望もアメリカ時代を含めれば、俺と同じ年数で医者をしているという事だろう。


「蒼空君っていうんだ。カッコいい名前だねぇ」


 そう朔望は子供と一緒の目線になって話をしている。


「蒼空君はどんな事が好きなのかな?」


 そう診察とは関係無い事を話している朔望。


 ……へぇ、そういうもんなのかぁ。


 その診察方法に俺は興味を持ってしまい、さり気なく朔望の診察を見入ってしまっていた。確かに今の俺は歩夢の方をメインに見ておいた方がいいのかもしれないのだけど、それでも朔望の方が気になってしまっていたらしい。


「んーとね……海に飛び込む事かな?」

「へぇー、そうなんだ! 凄い事してるんだね!」


 そう本当に驚いたようなこうオーバーリアクションをしながら話をしている朔望。


「ま、でも……これは飛び込んだ時にやっちゃって。でもね! 雄介が助けに来てくれたから助かったんだよっ!」


 その蒼空の言葉に朔望は目を丸くしていた。


 どっちかつーと今の蒼空の話だけでは話の内容を掴めなかったという事だろう。


「ま、でも、雄介に助けて貰って良かったね」

「うん! 雄介ってさぁ、今はお医者さんしてるけど、昔は消防士さんだったって事も聞いたよー!」

「へぇー、そうだったんだねぇ」

「だからねっ! 雄介と消防団作ったんだー!」

「へぇー、そうだったんだね」


 と朔望はそう言った子供の話に耳を傾けていた。

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