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ー鼓動ー39

 本当に今は二人だけの時間。


 しかも島の事も何も考えなくてもいい時間で完全に心の中にも頭の中にもゆとりが出来ているような気がする。


 ……久しぶりに、雄介に甘えてみたいかも。


 でも俺からしてみたら、そう簡単に出来る事ではない。


 甘え上手な人なら、ここで彼氏の肩にトンっていう感じで頭を寄り掛からせる事が出来るのであろうが、流石にまだ俺にはそんな勇気はなかった。


 確かに無意識のうちに素直になれるって事は出来るようになったのかもしれないけど、意識がある時というのは未だに難しい俺。


 そう今の俺っていうのは完全に雄介の事を意識しちまってるから、そういう事は無理という事なんだろう。


 そして今は何でか二人の間に沈黙の時間が流れてしまっている。


 部屋にある掛け時計の針が時を勝手に流して行ってくれているだけだ。


 雄介は今……何を考えているのだろう?


 そこは流石に超能力者じゃないと分からない所だ。


 でももし自分にそういう能力があったら、それはそれでいいのであろうか? とも思う。


 例えそんな能力が自分にあったとしても人の心を読み解く事が出来たとしても、何だかそれはそれで面白くないような気がしてくる。


 逆に言えば他の人が心の中で言っている悪口だって聞こえて来てしまうのだから、それは流石に聞きたくはない。


 分からないからこそ人間って感じがするからだ。


 そんな事を考えていると、雄介の腕が俺の肩を包み込んで来た。


 肩に頭をトンという感じではないのだけど、それでも十分に俺は温もりを感じれて心地いい感じがしている。


 そう俺が出来ない事を雄介はやってくれるのだ。


 心の中を読み取れなくても感じるという事は出来るという事だろう。


 いや雄介が既に俺にこういう事をするって考えていてくれた事なのかもしれないけど。

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