そういう風に雄介は俺に触れてきていても、今日の雄介っていうのは言葉を発してくれる事はなかった。だから俺はそんな雄介が心配になったのか、
「……雄介?」
と名前を呼んでみた。
「ん? 何?」
そう答えてくれる雄介。
「あ、いやさ、なんて言うの? 何で何も喋らないのかな? って思ってさ」
「ん? 今はただ望とこうしておりたかっただけや」
「え? あ、そう……」
自分から質問してみて、こっちが赤面してしまいそうな答えが雄介から返って来た。
だから俺は俺で余計に言葉を詰まらせてしまうのだ。
「嫌いではないやろ?」
「え? あ、ぅん……」
その俺の言葉に雄介は安心したのか、雄介は再び黙ってしまう。
確かに雄介とこうのんびりとした空間にいるのは久しぶりだ。
本当に今は何も考えずに居たいという事だろう。
そうこの島に居る時には常に何かを考えていたような気がする。だからなのか今の時間っていうのは静止の時間なのかもしれない。
そう俺も雄介も。
これだけ静かな時間を過ごしているのは本当に久しぶりだ。
波の音。
時計の針が刻む秒針の音。
風の音。
今はその全てがハッキリと聞こえて来る。
この島が本当に静かな空間だと思い出せたのは本当に久しぶりの事なのかもしれない。
いや確かに聞こえてはいたのだけど、常にこう何かを考えていたから、そういった自然の音というのは耳にこうハッキリとは聞こえてなかったという事だ。
「……ホンマにここって、こないに静かな所やったんやなぁ」
「……へ? あ、ああ」
いきなりの言葉に俺はワンテンポ遅れて返事をするのだ。
「今まで忙しかったから、ここがこんなに静かな所やっていうの気付いてなかったっていうのか、こう自然の音が全く耳には入って来てなかっただけなのかもしれへんけどな」
「え? まぁ、そうなんだろうな……」
気付くと今俺が考えていたような事を雄介も言っているような気がする。
要は俺と雄介というのは同じ事を考えていたって事になるのか。
……あ、雄介の声も久しぶりに聞いたような気がするんだけどな。
そう思った途端に俺の鼓動が早く打ち始めてしまう。
……この感覚も久しぶりのような気がする。
雄介にしか反応しない心臓の鼓動。
ドクドクドクドク!!
しかも雄介に聞こえてないかと、そっちの方でもドキドキとしてきているような気がする。
だって今の俺と雄介の距離というのは目と鼻の先でもあって、くっついているのだから。
しかも雄介の腕が俺の肩へと回っているのだから、雄介に俺の鼓動の音が伝わってしまっているのかもしれない。