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ー鼓動ー41

「ホンマ……こないな時間っていうのは久しぶりやんな」


 すると雄介は俺の手を取って雄介の心臓の辺りへと運んで行くのだ。


「ぇ?」


 その雄介の行動に俺は雄介のを見上げる。


「ん? 俺も望と同じやって事」

「へ? あ、ぅん……」


 確かに雄介が誘導していった手のひらから、雄介の心臓の鼓動が伝わって来る。


 ドクドクドクドク……。


 って、確かに俺と同じ位の早さで波打っているのが伝わって来た。


 そしてもう一つ伝わって来ているのは温もりだ。


 人の温もりというのは生きているっていう証拠。それと恋人同士にしか感じられない温かさもそこにはある。


 初めて雄介と二人きりになれた時に俺が雄介に使った言葉でもある。


 初めての時は誤解を生んでしまったのだけど、今はそれも通じるようになって来て、時々雄介も思い出したかのように使ってくれている。俺からしてみたら何気にお気に入りの言葉だったりするのだ。


「雄介も……その……俺の鼓動……」


 俺はそこで言葉を止めてしまっていた。


 何だか、それ以上は恥ずかしくて言えなくなってしまっていたからだ。


 でも今の雄介なら、その言葉だけでも俺の事を汲み取ってくれるだろ?


「ああ……ちゃんと、望のも俺に伝わって来てんで」


 そう笑顔で言って来てくれる雄介。


 ……ほら、やっぱり伝わってた。


 その雄介の笑顔だって本当に久しぶりに見たような気がする。


 ホント雄介の笑顔って、太陽みたいな笑顔をしている。


 それでどんどんどんどんと俺の冷めきっている心を、その太陽みたいな笑顔で溶かしていってくれているような気がするんだ。


 その太陽のような笑顔で体の方も今にも溶けてしまいそうだ。


 確かに今は夏だから、体が溶けてしまいそうだ。っていう表現を使うのかもしれないけど、それとは違う。


 そう体から力が抜けてしまうっていう事で癒されるという事だ。


 そっちの表現の方が正しいのかもしれない。


 やっと恋人といるっていう意味が分かってきた。


 こうやって恋人同士でいると、心も体も癒やしてくれる存在っていうのが恋人なんだろう。 そして安心出来る場所。そういう人が本当の恋人と言える人なのかもしれない。

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