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ー鼓動ー49

 そして五分位で今は朔望達が住んでいる家へと到着するのだ。


「よっしゃー! やっと着いたでっ!」


 そう本当に雄介というのは子供のように思っている事を口に出してしまうタイプのようで、だからなのか着いた途端に手を天に向かい高々と掲げ思わず声を上げてしまっていた。


「ホンマ、ここに来るにも久しぶりやんなぁ」

「そうだな」


 俺は朔望から預かって来た鍵でドアを開ける。


 すると外も中もほぼ気温が一緒なんじゃないかと思う位、部屋内も暑かった。


 むわんとした空気が俺達の体を包む。もしかしたら外よりも部屋内の方が暑く感じられるのかもしれない。


「へ? 何この部屋の中の気温、外と変わらんやんか……つーか、中の方がむっちゃ暑いんと違う?」

「ま、とりあえず、先にエアコン点けて来ないとだな!」


 俺はそう言うと一気に部屋の中へと入ってエアコンのスイッチを入れるのだ。


「部屋ん中ってこないに暑いもんやったか?」


 雄介も後から部屋の中へと入って来て荷物はその辺に置くとソファへと腰を下ろしTシャツの襟を掴むと体の中に直接冷たい空気を入れるかのようにパタパタと手で煽ぎ始める。


 ……いやぁー、確かに暑いからっ!


 島の生活に慣れてしまっていた体には本当に堪える暑さだった。


 島では本当にカラッとしているおかげで昼間でもそんなに暑さというのは感じないというのか、東京のように蒸し暑くはない暑さだという事だ。夜になるとエアコンもいらないような暑さにもなる。


 だからなのか本当に今の東京の暑さには付いて行けないような暑さなのかもしれない。


「タクシーで来てもうたから、買物とかもしれ来てないやんか」

「あ……」


 雄介にそう言われて気付いた。


 確かに島を出る前に飲物は買って出てきていたのだけど、その飲物だってもう底を尽きそうな位な量しかない。


「結局、買物に行かないといけないって事なんだよな?」

「何も無いんじゃ、そういう事になるやんなぁ」

「そうだ! 車は?」

「朔望のはあるのかもしれへんけど、鍵は流石に借りて来てへんやろ?」


 ……確かに雄介の言う通りだ。家の鍵というのは朔望から預かって来たのだけど、流石に車の鍵までは預かって来てはいない。


「もう少し、陽が暮れて暑さも和らいだ位に行くしかないみたいやね」

「ああ、そうだな」


 そこで話を決着させると俺もソファへと腰を下ろすのだ。

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