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ー鼓動ー53

「食料の方はこんなもんでええかな? 後は水分もって所かな? スポーツドリンク系でもええねんけど、ここは麦茶がええのかもな。 あ! せや! 今日は久しぶりにお酒でも呑もうか?」

「あのな、流石に酒はまだ俺が許さねぇよ。今回、何の為に東京に来たんだよ。ハメを外しに東京まで来たんじゃねぇぞ」

「あ、そうやったんだっけな。ほな、飲物は麦茶でええか?」

「ああ、そうしておこうぜ」

「夏はやっぱし麦茶がええもんなぁ。 夏! って感じがせぇへんか?」


 そうやって無邪気な感じで言う雄介。


 そんな雄介の姿を見てるのは俺は好きだった。


 雄介と俺というのは本当に性格が正反対だと思う。俺の方は昔っからクソが付く程の真面目な人間なのだが、雄介の方は本当にその逆で大人になった今でもこう子供みたいに無邪気で遊ぶ時にはトコトン遊ぶし仕事の時というのは本当に真面目だ。まぁ、そこが俺からしてみたら羨ましい所なのかもしれない。


「あ! それとな! 麦茶って水分補給には一番ええんやって! スポーツドリンクっていうのは塩分とか入っててええとも言うねんけど、スポーツドリンクやと糖分が入ってまってるやろ? 糖分は摂りすぎるのも良くないらしいしな、せやから、麦茶っていうのは一番水分補給にはベストらしいで」

「あ、確かにそうだったな」


 そんな会話をしながら俺達はレジへと向かうのだ。


 こんな時間なのだからレジというのは混んでいた。


 でも今は二人でいるのだから退屈な時間ではない。


 寧ろ二人で話をしているのだから時間というのは過ぎて行くのは早いのかもしれない。いや二人でいるからこそ時間が早く過ぎていっているように思えているだけだ。


 この待っている時間だって億劫に感じないのだから。


 そして会計を済ませると商品を袋へと詰めて店を後にする。しかし雄介っていう人間ってこういう事に関して慣れているからであろうか、なんていうのか豆でもあるのか、袋詰めだって俺からしてみたら綺麗に入れられているようにも思える。確かに重い物というのは袋の下の方に入れていくのは当たり前なのだけど、昔流行ったパズルゲームのように隙間無く綺麗に入っている所が凄いっていうのであろうか。


 雄介は相変わらず荷物を持ってくれている。だけど俺一人が持ってないのはと思い、


「一個持ってやるよ」

「ええって、気にすんなや。これやって、十分に筋トレになるんやしなぁ」

「あ……!」


 今の雄介の言葉で思い出した事があった。 そこでクスクスと笑い始める俺。


「なんやねん、いきなり笑い出して」

「え? ああ……前にもこんな事、あったなーっていうのを思い出してな」

「へ? そうやったっけ?」

「覚えてねぇの?」

「んー?」


 そう考えてしまっているのだから雄介はもうそんなに覚えてないって事だろう。


「ま、かなり前の事だからな、覚えてなくても仕方ないか。そうそう! 昔、俺と一緒に買物に行った時にもお前似たような事を言ってたんだよな」

「そうやったっけ?」

「ああ……」

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