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ー鼓動ー82

 その雄介の言葉に俺は顔を真っ赤にさせる。


「それについでみたいなもんやんか、そのお店の近くにホテルもあるんやろ? 夜はそこで泊まりにして、ゆっくり楽しんだ方がええやんか」

「あ、え? ぁ……まぁ、って泊まりなのか?」


 と最後の方は小さな声で突っ込みを入れる俺。


「へ? 泊まりでええやろ? 休憩やとゆっくりと出来ないしなぁ。ほら、ニ時間とかって時間も決まっておるし。今の俺等じゃ、二時間なんてあっという間に過ぎてまうで、それに、まぁ、今の俺じゃ二時間位じゃ足りないしなぁ」

「……」


 そう言う雄介に俺は言葉を失ってしまっていた。


 そう! どう答えたらいいのか? ってうのが分からなかったからだ。俺からしてみたら「うん」とも「ううん」とも答えられない状況だったからなのかもしれない。


 だいぶ素直になってきたと思われる俺だけど、そこは、まだ素直になれないっていうのが本音だろう。


 いや雄介と体を重ねる行為というのは問題無い。だけどそういう話になるとまだまだ上手く答える事が出来ないという事だけだ。


「あ、まぁ……とりあえず、雄介の言う通りでいいよ」


 まぁ、これが俺からしてみたら百歩譲っての答えだという事だろう。


「ほな、そうしようっか?」


 そう言い雄介はまた俺の一歩先を歩き始める。


 外で二人で歩く時というのは、雄介が一歩先を歩いている事が多い。そういう事、昔の俺だったら気にしてたのだけど……今の俺からしてみたら気にならない。だって男同士でも友達同士だったら隣りで街中を普通に歩いてるだろ? そう昔の俺っていうのは雄介の事を意識し過ぎてしまっていたという事だろう。


 だから今日の俺というのは雄介の真隣を一緒の歩調で歩き始める。


 俺が気にしないっていう事を雄介にも教えて上げたかったからなのかもしれない。


 しかし雄介は身長がある。だから歩く速さだって足の長さが違うのだから歩調だって違うに決まっている。だけどそこは気持ち的に俺が小刻みに速く歩けばいいのだから雄介の歩調に合わせるには問題はない。


 それに気付いたのか、


「望の隣りで歩いてええのか?」

「え? そこはいいだろ? だって男同士の友達だって隣同士で歩いているもんなんだからさ」

「あ、まぁ……そうやんなぁ」

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