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ー鼓動ー83

 一瞬、雄介は言葉を止めたのだが、その後直ぐに俺の方に笑顔を向けて来て、


「ほな、一緒に歩こうか」


 と言って来てくれる雄介。


 そうだ。雄介なら突っ込んで来てくれないと思ってた。ーそこが雄介のいい所なんだよな。


「……で、じゃあ、とりあえず、駅に向かうでええねんやろ? どないする? バスで行くんか? 歩いて行くんか?」

「ああ、そうだな。ここからだったら、駅まで歩いて行っても、そう遠くはないんだろ?」


 そう言うと雄介はスマホを取り出し、検索してくれているようだ。


「んー、バスやったら、二つ分って所かな?」

「だよな? 前に雄介の事を駅まで迎えに行った事あったし、それ位かな? って思ったんだよな」

「まぁ、それ位やったら歩いた方が……ん? でもな、今時間っていうのはお昼の時間やし、暑くないか?」

「あー……まぁ、そう言われてみればそうなんだよな」

「確かに俺等の体力やったら、バス停二つ分っていうのは、余裕で歩けるのかもしれへんけど、この暑さやとなぁ、やっぱ、そこは体力いつも以上に持ってかれるしな」

「確かにな……それに、俺等っていうのは帽子被ってる訳じゃないし、頭に直射日光を当ててるようなもんだろ? それは流石に良くないのかもな」

「そうな、確かに帽子くらい被っておったら全然違うのかもしれへんけど、流石に歩くのは辞めた方がええのかもしれへんなぁ」

「ホント、熱中症になっちまったら、ゆっくりとしてる場合じゃなくなるだろうしな」

「そういうこっちゃな……ほな、バス停まで行こっ!」

「とりあえず、今はそれが正解なのかもな」


 話をしていて確かに失敗した。普段の俺達というのは普通に車をに乗ってる事が多いのだから、帽子というのは普段から持ち歩いてはいないという事だ。そうこの日差しが照りつける太陽の中で帽子を持って出ないというのは結構無謀な事だったのかもしれない。


 でも雄介はキャップとかっていうのは似合うにかもしれないのだけど、俺はそう言った帽子は似合わなそうだ。


 と帽子の話をしていて俺はそう考えてしまう。そりゃ、手術の時に被る帽子というのは被らなきゃならない物だから似合うとか似合わないとかっていうのは別だ。だけど普段被る帽子に関しては似合わないのなら被りたくはないのだから。


 ま、そこは仕方ないか……。


 そう俺はそこで諦めるのだ。


 そう思っているとバスがバス停に着いたようで、そのバスへと乗り込む俺達。

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