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ー鼓動ー89

『あ、そういう事な。ほんだったら、そこで待っておいて、俺そこに行くし。ほんで、他に目印になるようなもんあるか?』

「え? あーと、行き先って言うのは何処なんだ? そしたら、俺もその階段で上がってくし」

『あ、そうやん……』


 そう言いながら雄介はもう俺の事を探す為に行動してくれているのか、雄介のスマホからは電車の音やアナウンスの声とそして雄介が階段を降りて来ているのであろう音が聞こえて来る。


 すると、たまたま俺はその雄介が降りて来る階段の真下にいたようで、どうにか雄介と出会う事が出来たようだ。


 それと同時に雄介は通話を切っていた。


「ホンマ、良かったわぁ、直ぐに望の事見つけられて。ホンマ、スマホって便利な物なんやな」


 俺はそう言う雄介にホッとする。いや正確には雄介の事を見上げて微笑んでいた。


「今度からは離れんように気をつけなきゃアカンよな? ホンマは手を繋げたら一番ええねんけど、それ流石に出来へんやろ?」

「ああ、まぁな……」


 今度、俺は雄介の後ろではなく隣りを歩きながら階段を上がって行く。


 ちょっとしたハプニングはあったもののスマホのおかげで雄介に会えて良かったとさえ思える程だ。


 スマホや携帯がなかった時代っていうのは例えこういう事があった場合のはどうしていたのであろうか。俺達の時代ではそこは分からない所でもある。


 また、こうして会えた事でも今は良しとしよう!


 その駅からニつ目の駅で、やっと今日の目的地である駅へと着いたようだ。


 ここもさっきの駅と変わらないと言った感じなのかもしれない。


 東京は東京でも本当にテレビでも出てくるような場所というのは本当に人々が行き交う所だ。


 しかし本当にこれだけの人がいるっていうのに誰一人として知り合いはいやしない。いやこれだけの人がいるからこそ知り合いなんていないと言った方が正しいだろう。


「ホント、人ってこんなに居るもんなんだな」


 そう隣りで歩いている雄介に話し掛ける。


「あー、まぁな。あ! 話変わんねんけど、まだ、疲れてへんか?」

「……え? あ、まぁ、少しはな。だって、こんなに人がいるんだもんさ、少し位は疲れてるさ」

「ほな、まだまだ今日は時間っていうのはあるんやし、飯でも食うてからまた移動せぇへん?」

「そういや、昼飯まだだったな」

「そうやろ?」

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