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第10話 入学式

### 入学式


 学校に着くと、そこは新たな制服を着た生徒たちで賑わっていた。


「やばいな⋯⋯みんな、ちょっと大人っぽいぞ」


 カズは周囲を見渡しながら、少し緊張した表情を浮かべる。


「おまえも、その制服を着てるんだから、同じだろ?」


 ハヤトもまた、制服を着た自分の姿を鏡のようにして見ていた。


「でも、なんか、小学生のときとは違う感じだよな⋯⋯」


 カズは制服の襟を直しながら、少し照れくさそうに笑う。


「まぁ、確かに、俺たちももう子供じゃないってことだな」


 ハヤトはそう言うと、カズの肩を軽く叩いた。


「なぁ、ハヤト。俺たち、同じクラスになれてるかな?」


 カズは教室の掲示板に向かって歩きながら、少し不安そうに尋ねる。


「⋯⋯まぁ、願書は同じにしてあるから、可能性は高いと思うけどな」


 二人は掲示板の前で立ち止まり、自分の名前を確認する。


「⋯⋯あったあった! 同じクラスだ!」


 カズは喜びの声を上げた。


「よかったな。じゃあ、また毎日一緒に過ごせるな」


 ハヤトも安心したように微笑んだ。


「当たり前だろ! 約束したじゃん? 中学になっても、ずっとこうしていようって」


 カズはそう言うと、ハヤトの手を握った。


「⋯⋯おまえ、本当に依存しすぎだな」


 ハヤトは苦笑しながら、カズの手を返すように軽く握り返した。


「依存って、そんな言い方するなよ。オレはただ、ハヤトと一緒にいたいって言ってるだけだ」


 カズは少し真剣な表情でそう言うと、ハヤトの目を見つめた。


「⋯⋯俺も、おまえと一緒にいたいよ。でも、学校の中では、ちょっと控えめにしろよな? 他の奴らに変に思われるから」


「わかってるよ。でも、放課後はまたこうしていいよな?」


 カズは意地悪そうに笑う。


「⋯⋯まぁ、それは、また今度考えよう」


 ハヤトは少し恥ずかしそうに目をそらしながら、教室の中へと歩き始めた。




 入学式が始まり、校長先生の話に耳を傾ける中で、カズはふと、小学生の頃のことを思い出していた。


 あの頃、二人はまだ子供だった。


 でも、その心の奥底には、今と変わらぬ想いがあった。


「⋯⋯オレたち、もう小学生じゃねーんだよな」


 カズは心の中でそう呟く。


 そして、隣に座るハヤトの横顔を見つめながら、静かに微笑んだ。


「⋯⋯中学生になったからって、オレたちの関係は変わらない。いや、もっと深くなる。オレは、ハヤトとずっとこうしていきてー」


 カズは、心の中でそう誓った。


 入学式が終わり、教室に戻った後も、二人の関係は変わらなかった。


「なぁ、ハヤト。放課後、ちょっと一緒に帰らねーか?」


 カズは、授業が終わると同時に、ハヤトに声をかける。


「⋯⋯うん。でも、今日はちょっと親が迎えに来るって言ってたから、無理かも」


「そうか⋯⋯じゃあ、また明日な」


 カズは少し残念そうにそう言うと、ハヤトの肩を軽く叩いた。


「⋯⋯また明日な」


 ハヤトも微笑みながら、カズの手を握り返した。


 二人の関係は、小学生の頃と変わらず、そして、より深く続いていく。


 それは、彼らの性春の始まりを告げるような、特別な時間だった。




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