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第24話 天敵 or 友達

### 天敵 or 友達


 カズには苦手な人物が一人だけいた。


 名前はケンゴ。


 他の奴らと違って、ケンゴはカズに触れられるのを物凄く警戒していた。


 一度、触った時なんて、


「触んじゃねーよ! キショイなっ!!」


 とかと、物凄く騒がれてしまった。


 それ以来、カズはケンゴのモノだけは触らないように心掛けている。


 もちろん、トイレで覗き見ようとするようなものなら、怒髪天を衝く勢いで怒鳴られるのは目に見えている。


 よってカズは、ケンゴには近寄らないようにしていた。


 しかし、ある日の事。


 ふとした拍子からケンゴのモノを触ってしまった。


 その時、ケンゴのモノは勃起していた。


 カズは咄嗟に謝った。


「ゴメン! 触るつもりじゃ無かったんだ! ほんと、ゴメン!!」


 ケンゴは赤い顔をしたまま、黙っていた。


 普段ならものすごい剣幕で怒鳴ってくる筈のケンゴが、一言も言わず、黙って自分の席に着いた。


 拍子抜けしたカズだが、しかし、問題はそれで終わらなかった。


 放課後、帰宅しようとしていたカズを、ケンゴが呼び止めた。


「ちょっくら付き合えや」


 そう言って、体育倉庫までカズを連行して行く。


 体育倉庫に着くと、ケンゴは入り口のドアを閉め、カズに言った。


「おまえに聞きたい事がある」


「何?」


 カズは恐る恐る尋ねる。


「こんな事はおまえにしか聞けない」


「だから、何?」


 ケンゴは一瞬黙り込むと、意を決したように口に出した。


「他の奴らと比べて、俺のモノはどうだ? やっぱ小さいのか?」


「⋯⋯へ?」


 赤い顔をして、ケンゴがもう一度言う。


「だから! 俺のモノは他の奴らより小さいのか、と聞いてる」


 カズは一瞬、ケンゴの言葉の意味を理解できなかった。


「⋯⋯え? 何言ってんの?」


 カズは思わず聞き返す。


 ケンゴは目をそらしながらも、それでも何かを吐き出すように続ける。


「俺、おまえにしか聞けないんだよ。他の奴らには言えないし、言ったら笑われるだろうし⋯⋯。でも、おまえは俺のモノに触ったことがあるだろ? その時、感じたこと、教えてくれないか?」


 カズは混乱した。

 ケンゴが、あそこまで警戒していたカズに、自分の身体のことを尋ねてくるなんて、考えてもみなかった。

 しかも、その内容が「モノのサイズ」だなんて⋯⋯。


「⋯⋯まさか、真剣に聞いてんの?」


 ケンゴは眉をひそめ、苛立ちながらも、どこか不安そうに言った。


「当たり前だろ! おまえ、俺が何であんなに警戒してたかわかんねーのか? 触られるのが気持ち悪いってんじゃねーよ。ただ、恥ずかしかったんだよ! 俺のは他の奴らと比べて、やっぱ小さいから⋯⋯」


 カズは言葉を失った。

 そこまで言って、ケンゴは顔を真っ赤にし、目を伏せたままだった。


 カズは改めて、先ほどのことを思い返す。

 確かに、ケンゴのモノに触れたのは一瞬だったが、確かにそれは勃起していた。

 そして、大きさに関しては⋯⋯。


「⋯⋯別に、小さくなんかねーよ」


 カズは正直に答えた。


「むしろ、普通よりちょっと大きいぐれーだと思う」


 ケンゴは驚いたように顔を上げた。


「⋯⋯本当かよ?」


「本当だよ。俺、嘘つかないし。ていうか、こんなこと聞かされると思ってなかったから、正直に答えるしかねーよ」


 ケンゴは少し恥ずかしそうにしながらも、ほっとした表情を見せた。

 だが、すぐにまた何かを思いついたように、カズに尋ねる。


「じゃあ⋯⋯、もし、他の奴らと比べて、俺のが大きいって言ったら、信じるか?」


 カズは首を傾げた。


「⋯⋯どういうこと?」


 ケンゴは少し恥ずかしそうにしながらも、意を決したようにズボンのチャックを下ろし始めた。

 カズは慌てて声を上げる。


「ちょ、ちょっと、何してんだよ!」


「黙れ! おまえが真実を言えるか、試してんだよ!」


 ケンゴは一気にズボンを下ろし、パンツも一緒に下ろした。

 そこには、確かにカズの想像以上に立派なモノが突き出ている。


 カズは目を丸くした。


「⋯⋯マジで、こんなに⋯⋯」


 ケンゴは恥ずかしそうにしながらも、少し得意そうに言った。


「どうだ? おまえが言った通りだろ? 俺のは他の奴らより、僅かにデカイんだ」


 カズは混乱しながらも、正直に答えた。


「⋯⋯うん、確かに、デカイ。でも、なんで今ここで⋯⋯?」


 ケンゴは少し恥ずかしそうにしながらも、真剣な表情で言う。


「俺、ずっと悩んでたんだよ。他の奴らと比べて、俺のが小さいんじゃないかって。だから、あんなに触られるのを嫌がってた。でも、おまえに触られた時、おまえが驚かなかったのが気になって⋯⋯」


 カズは苦笑いしながら答えた。


「驚かなかったっていうか、驚きすぎて声が出なかったんだけど。まさか、こんなに⋯⋯」


 ケンゴは少し照れくさそうに笑った。


「⋯⋯おまえ、変なやつだな。でも、ありがとな。俺、ちょっとスッキリした」


 カズは頷きながらも、少し不安そうに言った。


「でも、これ、誰にも言わないでくれよな。オレがケンゴのモノを見たって話、広まったらマズイだろ?」


 ケンゴはニヤリと笑いながら答えた。


「ああ、大丈夫だ。俺も言わない。でもな、カズ⋯⋯」


 ケンゴは少し真剣な表情に戻り、カズに近づく。


「おまえには、もうちょっと俺のことを理解してほしい。俺が警戒してた理由、わかってもらえたよな?」


カズは頷く。


「ああ、わかった。でも、次はもうちょっと普通に話してくれよな。いきなり体育倉庫に連れてこられると、ちょっと怖いんだよ」


 ケンゴは笑いながら、カズの肩を軽く叩いた。


「わかった。次からは、普通に話すから」


 そして、ケンゴはズボンを上げながら、カズに言った。


「⋯⋯おまえ、意外と信用できるやつだな」


 カズは少し照れくさそうに笑った。


「⋯⋯ケンゴも、悪くねーやつだな」


 それから、二人は体育倉庫を出て、校庭を歩きながら、何だかんだで話し始めた。

 ケンゴは、自分のコンプレックスをカズに話したことで、少しずつ心を開いていく。


 カズもまた、ケンゴのことをただの天敵だと思っていたが、意外と悩んでいたんだな、と感じた。


 二人の関係は、そこから少しずつ、変わっていくことになる。






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