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第28話 平穏な日常

### 平穏な日常


「なぁ、ケンゴ。今日遊びに行ってもいいか?」


 放課後の教室。

 窓の外にはオレンジ色に染まる空が広がり、静かな喧騒が耳に届く。

 カズが、いつものように無邪気な表情でケンゴに声をかけた。


 ケンゴは机に広げた数学のプリントから顔を上げ、眉をひそめた。


「いいけど、何かあったのか?」


 カズは肩をすくめると、少し恥ずかしそうに笑った。


「ん~、なんかオナニーしてーなーって思って」


 ケンゴは一瞬、言葉の意味を理解できずに眉間にしわを寄せた。


「⋯⋯は?」


「オレ、ケンゴん家でやりたいんだよ。いいだろ?」


 ケンゴは思わず天井を見上げた。

 カズの発言は、いつものことながら突拍子もない。


「おまえ、人ん家に来てオナニーするつもりかよ」


「そうだけど、マズイ?」


「普通、そういうのは一人でするもんだろ」


「えっ、オレよくハヤトとやってるけど?」


 ケンゴは完全に呆れ顔になった。


「おまえら仲良すぎ!」


 カズは少しむくれたように唇を尖らせた。


「ケンゴは恥ずかしいのか?」


「恥ずかしいに決まってんだろ!」


「えっ、でもオレ、ケンゴになら見られても平気だぞ?」


 カズは目を細めて笑う。

 まるで子供のように無邪気だ。


 ケンゴは頭を抱えたくなった。

 この友人は、本当に空気を読まない。


「おまえな、いくら友達だって、普通そういうことしないだろ」


 カズは少し考えた後、少し寂しそうに眉を下げる。


「ふ~ん。ケンゴとはけっこう仲良くなったから、そういうことも平気かと思ったんだけど、ケンゴはダメなんだ」


 ケンゴはその言葉に、なぜか胸の奥がキュッと締め付けられるような感覚を覚えた。


「⋯⋯判った、判った。してもいいぜ。その代わり、俺はしないぜ?」


 カズの顔がパッと明るくなる。


「うん。それでもいい。じゃあ、ケンゴの家に行こうぜ」


 カズは鞄を肩にかけると、サッサと教室から出て行った。


 ケンゴは後を追いかけながら、心底呆れたようにため息をつく。


「⋯⋯本当に、何考えてる奴だか」




 ケンゴの家に着くと、二人は離れのケンゴの部屋のソファに腰掛けた。


「オレ、ちょっとトイレ借りるわ」


 カズはそう言うと、ケンゴの部屋からトイレに向かう。


ケンゴは首を傾げたが、特に気にせずテレビをつけた。


 数分後、カズが戻ってくる。


「おっ、早いな」


「ん、準備終わってただけ」


「準備って⋯⋯」


 ケンゴが言葉に詰まっていると、カズはケンゴの隣に座った。


「じゃあ、始めるよ」


「はぁ? いきなり?」


 カズはケンゴの反応を気にする様子もなく、ズボンのチャックを下ろし始めた。


 ケンゴは慌てて目をそらす。


「ちょっと、待てよ! せっかく許したって言っても、いきなりは無理だろ!」


 カズは少し不満そうに眉をひそめた。


「じゃあ、ケンゴも一緒にやれば?」


「なんで俺まで!」


「ケンゴも勃ってるじゃん」


 ケンゴは思わず股間を押さえた。


「んなことないわ!」


「嘘ついても無駄だよ。ケンゴ、顔赤いし」


 カズはケンゴの手を取ると、優しく握った。


「オレ、ケンゴのことが好きだよ。だから、オナニーくらい一緒にしたいなって思ってんだ」


 ケンゴは言葉を失った。

 カズの言葉は、いつも通りの無邪気さの中に、どこか真剣さが混じっている。


「⋯⋯カズ」


「ケンゴも、オレのこと嫌いじゃないよな?」


 ケンゴはカズの手を握り返した。

 心臓がドキドキと鳴る。


「⋯⋯嫌いじゃないよ」


 カズの顔がパッと輝く。


「じゃあ、オナニー一緒にやろうぜ。オレ、ケンゴの顔見ながら出したい」


 ケンゴは赤面しながらも、心の奥底では、カズの言葉に胸が熱くなるのを感じていた。


「⋯⋯仕方ないな」


 ケンゴは覚悟を決めたように、自分のズボンのチャックを下ろし始める。


 カズは笑顔でケンゴの手を握りしめた。


「オレ、ケンゴとなら何でもできる気がする」


 ケンゴも、カズの手を握り返しながら、静かに微笑んだ。


「⋯⋯俺もだ」


 二人の手が、互いの股間に伸びる。


 静かなケンゴの部屋には、息遣いと衣擦れの音だけが響いていた。




「ケンゴ、オレ、もう出そうだ」


 カズの喘ぎ声が、部屋に響く。


 ケンゴもまた、カズの手の動きに合わせて、自分を扱いていた。


「俺も⋯⋯もうすぐだ」


 カズはケンゴの顔を見つめながら、自分を強く握りしめる。


「ケンゴの顔、見ながら出したい⋯⋯」


 ケンゴもまた、カズの瞳を見つめ返す。


「⋯⋯俺も、カズの顔見てたい」


 二人の呼吸が、一つに重なった。


 静かな部屋に、二人の喘ぎ声と、そして同時に広がる白濁した飛沫。


「⋯⋯はぁ、はぁ⋯⋯」


 カズはケンゴの肩に頭を預けた。


「ケンゴ、最高だった」


 ケンゴは少し恥ずかしそうに頷く。


「⋯⋯俺も、そう思う」


 カズはケンゴの頬を軽くつねった。


「ケンゴ、オレ、ケンゴとなら、何でもできる気がする」


 ケンゴはカズの額に自分の額を軽くぶつけた。


「⋯⋯バカ」


 カズは笑った。


 二人の間に、穏やかな静寂が訪れる。


 それは、友情でも、恋でも、それ以上の何かでもなかった。


 ただ、二人だけの特別な時間だった。






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