### 平穏な日常
「なぁ、ケンゴ。今日遊びに行ってもいいか?」
放課後の教室。
窓の外にはオレンジ色に染まる空が広がり、静かな喧騒が耳に届く。
カズが、いつものように無邪気な表情でケンゴに声をかけた。
ケンゴは机に広げた数学のプリントから顔を上げ、眉をひそめた。
「いいけど、何かあったのか?」
カズは肩をすくめると、少し恥ずかしそうに笑った。
「ん~、なんかオナニーしてーなーって思って」
ケンゴは一瞬、言葉の意味を理解できずに眉間にしわを寄せた。
「⋯⋯は?」
「オレ、ケンゴん家でやりたいんだよ。いいだろ?」
ケンゴは思わず天井を見上げた。
カズの発言は、いつものことながら突拍子もない。
「おまえ、人ん家に来てオナニーするつもりかよ」
「そうだけど、マズイ?」
「普通、そういうのは一人でするもんだろ」
「えっ、オレよくハヤトとやってるけど?」
ケンゴは完全に呆れ顔になった。
「おまえら仲良すぎ!」
カズは少しむくれたように唇を尖らせた。
「ケンゴは恥ずかしいのか?」
「恥ずかしいに決まってんだろ!」
「えっ、でもオレ、ケンゴになら見られても平気だぞ?」
カズは目を細めて笑う。
まるで子供のように無邪気だ。
ケンゴは頭を抱えたくなった。
この友人は、本当に空気を読まない。
「おまえな、いくら友達だって、普通そういうことしないだろ」
カズは少し考えた後、少し寂しそうに眉を下げる。
「ふ~ん。ケンゴとはけっこう仲良くなったから、そういうことも平気かと思ったんだけど、ケンゴはダメなんだ」
ケンゴはその言葉に、なぜか胸の奥がキュッと締め付けられるような感覚を覚えた。
「⋯⋯判った、判った。してもいいぜ。その代わり、俺はしないぜ?」
カズの顔がパッと明るくなる。
「うん。それでもいい。じゃあ、ケンゴの家に行こうぜ」
カズは鞄を肩にかけると、サッサと教室から出て行った。
ケンゴは後を追いかけながら、心底呆れたようにため息をつく。
「⋯⋯本当に、何考えてる奴だか」
ケンゴの家に着くと、二人は離れのケンゴの部屋のソファに腰掛けた。
「オレ、ちょっとトイレ借りるわ」
カズはそう言うと、ケンゴの部屋からトイレに向かう。
ケンゴは首を傾げたが、特に気にせずテレビをつけた。
数分後、カズが戻ってくる。
「おっ、早いな」
「ん、準備終わってただけ」
「準備って⋯⋯」
ケンゴが言葉に詰まっていると、カズはケンゴの隣に座った。
「じゃあ、始めるよ」
「はぁ? いきなり?」
カズはケンゴの反応を気にする様子もなく、ズボンのチャックを下ろし始めた。
ケンゴは慌てて目をそらす。
「ちょっと、待てよ! せっかく許したって言っても、いきなりは無理だろ!」
カズは少し不満そうに眉をひそめた。
「じゃあ、ケンゴも一緒にやれば?」
「なんで俺まで!」
「ケンゴも勃ってるじゃん」
ケンゴは思わず股間を押さえた。
「んなことないわ!」
「嘘ついても無駄だよ。ケンゴ、顔赤いし」
カズはケンゴの手を取ると、優しく握った。
「オレ、ケンゴのことが好きだよ。だから、オナニーくらい一緒にしたいなって思ってんだ」
ケンゴは言葉を失った。
カズの言葉は、いつも通りの無邪気さの中に、どこか真剣さが混じっている。
「⋯⋯カズ」
「ケンゴも、オレのこと嫌いじゃないよな?」
ケンゴはカズの手を握り返した。
心臓がドキドキと鳴る。
「⋯⋯嫌いじゃないよ」
カズの顔がパッと輝く。
「じゃあ、オナニー一緒にやろうぜ。オレ、ケンゴの顔見ながら出したい」
ケンゴは赤面しながらも、心の奥底では、カズの言葉に胸が熱くなるのを感じていた。
「⋯⋯仕方ないな」
ケンゴは覚悟を決めたように、自分のズボンのチャックを下ろし始める。
カズは笑顔でケンゴの手を握りしめた。
「オレ、ケンゴとなら何でもできる気がする」
ケンゴも、カズの手を握り返しながら、静かに微笑んだ。
「⋯⋯俺もだ」
二人の手が、互いの股間に伸びる。
静かなケンゴの部屋には、息遣いと衣擦れの音だけが響いていた。
「ケンゴ、オレ、もう出そうだ」
カズの喘ぎ声が、部屋に響く。
ケンゴもまた、カズの手の動きに合わせて、自分を扱いていた。
「俺も⋯⋯もうすぐだ」
カズはケンゴの顔を見つめながら、自分を強く握りしめる。
「ケンゴの顔、見ながら出したい⋯⋯」
ケンゴもまた、カズの瞳を見つめ返す。
「⋯⋯俺も、カズの顔見てたい」
二人の呼吸が、一つに重なった。
静かな部屋に、二人の喘ぎ声と、そして同時に広がる白濁した飛沫。
「⋯⋯はぁ、はぁ⋯⋯」
カズはケンゴの肩に頭を預けた。
「ケンゴ、最高だった」
ケンゴは少し恥ずかしそうに頷く。
「⋯⋯俺も、そう思う」
カズはケンゴの頬を軽くつねった。
「ケンゴ、オレ、ケンゴとなら、何でもできる気がする」
ケンゴはカズの額に自分の額を軽くぶつけた。
「⋯⋯バカ」
カズは笑った。
二人の間に、穏やかな静寂が訪れる。
それは、友情でも、恋でも、それ以上の何かでもなかった。
ただ、二人だけの特別な時間だった。