青羽イオ
文芸・その他純文学
2025年07月31日
公開日
2,251字
連載中
本作は、以前投稿した超短編『繭の中から』をもとに、大幅に加筆・再構成した長編版です。
昭和初期の信州を舞台に、蚕と少女、そして“変わること”に抗う心を描きました。
あの掌編が印象に残っている方も、初めて読む方も──
ぜひ、繭の奥に宿る静かな物語に触れてみてください。
昭和初期の信州。
養蚕を営む家に暮らす少女は、祖母から“繭守”の役目を教わりながら、静かな日々を送っていた。
しかし、身体の変化とともに、羽化を運命づけられた蚕たちの生と死が、どこか他人事ではなくなってゆく。
口を持たず、語ることもなく命を終える白い生きものたち──
彼らの沈黙に耳を澄ますうち、少女の中に、ある疑問と祈りが芽生えていく。
これは、「変わること」に戸惑いながら、与えられた役目と命の意味を見つめ直す、
ひとりの少女と“声なき命”の、静かな夏の物語。