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第16話 ラーク

 小さい体でいつもの作業をするのは思いの外骨が折れた。

パンをこねるのにも力が必要なのに、なんせ8歳の力。全然足りない。


「まいったなあ。これじゃあ試作もままならない」


 粉だらけになった私は仕方なくお風呂で小麦粉で汚れた体を洗うことにした。

いつもの感覚で袋を持ったら盛大にこぼして全身粉まみれになってしまったのだ。


「はあ。当たり前だけど胸もぺっったんこ」


 私はお風呂に入るといつもと違う体つきに困惑する。

 いつもは豊満なバストに細い腰が自慢の私のワガママボディがまさか8歳の子供に戻ってしまうなんて…この時一番凹んだ。


 お風呂から上がるとワンピースは洗濯中なのでタオルを巻いて部屋の中を彷徨く。するとタイミング悪くリンゴンと鐘の音がなった。


(こんな時に来客か…無視するのが賢明だな)

 私はそうっとドアに近づくと聞き耳をたてた。


『おかしいな。日中はここにいるってサシャさんに聞いたのに…出直すか』


(サシャの紹介!もしかして弟子候補かもしれない)

 思わず扉を開けてしまった。

 すると鼻筋を通った涼しげな目をした美青年がそこに立っていた。青年は優しい笑顔を浮かべると屈んで私に目線を合わせて問いかけた。


「ここの子かな?ララさんにお子さんいることは聞いてないけど、今日から住み込みで働かせてほしくて面接に来たラークだよ。よろしくね」


「よろしく…」


 第一印象は良かった。私に目線を合わせてしゃべってくれたし、何よりかっこよかったから。生前から面食いな私にとってそれは重量な位置を占めていた。


「お兄ちゃんはどうして冒険者にならないの?」


 剣を背中に背負ってどう見ても冒険者風なのにパン屋になりたいなどおかしな話だった。

 ラークは嫌がらずに優しく答える、


「実はね、俺は自分のミスでパーティーを俺以外全滅をさせてしまったんだ。だからもう冒険者は続けられなくて…違う職を探していたところでララさんの求人を見つけたんだ」


 ラークはその当時を思い出すように辛いく悲しい表情を浮かべる。

(辛いことを思い出させてしまった)

 私は少し後悔したが、一応聞かないといけないことなので仕方なかった)


「とりあえず今はララは対応できないから明日また来てくれる?ちなみに明日は臨時休業する予定だからいつ来てもいいよ」


「珍しいね。でもありがとう。じゃああまた明日」


 ラークが去っさってから私は胸が高tなあっていた。

(あんなイケメンが私の弟子に!?心臓が持つかしら)


 答えはすでに出ていた。もちろん合格だ。

 明日を楽しみに私は店内の清掃を開始した。


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