目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第四話「サイミーン術」



 「1」


 ーー????ーー


 ミーン、ミーン、ミーン。


 ーーこのままだろうか?


 ミーン、ミーン、ミーン。


 ーーずっとこんな感じかな。


 ミーン、ミーン、ミーン。


 ーーそいつはずっと鳴りぱっなしだ。


 ーーーーーー、


 サイミーン術がお茶の間のテレビ番組に披露されるとたちまち話題になりSNSで拡散されてトレンドなり、野花市の間でも老若男女問わず広まる。

 そんなサイミーン術に便乗した子どもおもちゃ売り場にサイミーンという蝉のおもちゃが売られる。

 そこでとある少女が誕生日祝いに蝉のおもちゃを購入した時から怪異談の始まりである。


 ーー「野花小学校5年2組」ーー


「えー。次は164ページを開いてください」

 退屈で居眠りしそうな国語の授業にもかろうじて耐えている私、米金幸子よねかねさちこである。

 (ウト、ウト、ウト)

「幸子さん?幸子さん今寝てたでしょ?」

「はい!?」

 意地悪なおねぇキャラの田辺先生からツッコミにも断じて寝てない私。

「……いえ、寝てません」

 その問いかけに深いため息する田辺先生。

「あなた。その顔を見ても言えるかしらね?」

 顔?みんなは私を見てクスクスと笑っていた。

 そして「顔を洗ってらしゃい」と田辺先生が言うので席を立ち手洗い場で顔を洗いに行くと鏡に自分の書き写したノートがくっきりついていた。

 少し恥ずかしかった。


 「2」


 ちょうど昼休み時間で私は給食を早めに終わらせた後、早速空きの理科室で友人である楓達を誘ってサイミーン術をする事を決めた。

「なー。早くやってくれよ」

「ちょっと待ってて」

 サイミーン術とは巷で流行っている新感覚の催眠術らしい。なんでもかかるとなかなか抜け出せないらしい。私はそのサイミーン術がかかりたくて昨日のデパートでお母さんとそのサイミーン術を出す蝉のおもちゃを誕生日祝いに買ってもらったのだ。

 だから友達の前で初めてサイミーン術をかけるが、

「ついた!」

 (ミーン、ミーン、ミーン)

「何も起こらないわね?」

 サイミーン術はたしかに出してるがミーンミーンと鳴り響くだけである。

 しかもスイッチ切っても鳴り止まない。

  しばらくして何も起こらないので、私はそのままお開きにしようとしたがみんなは様子がおかしいのである。

 まるで時が止まったかのように強く揺さぶっても微動だにもせず全く動かないのである。

 だから私怖くてそのまま理科室に出ようとしても扉の戸が完全開かなくなった。

「もしかしたら出られない!?」

 私はどうやらサイミーン術にかかり、何かのチカラで閉じ込められたようだ。


 「3」


 私は何度も蝉のおもちゃを叩きつけたり踏みつけたり壊そうとするが壊れない。そのほかに電池を抜いたりしていろいろ試したりもしたが無駄の足掻きだった。

 私はずっとこのままなんだろうか?

 それとも死ぬまでなんだろうか?

 それとも時間が来たら元どおりかな?

 いやだいやだ怖い怖いよーー!!?

 と、私の中でいろいろと思考内を巡り合わせしながら不安を払拭した。


 ーー体感時間1時間後ーー

 暇なので寝ていたがなかなか蝉のおもちゃがうるさくて寝付けない。


 ーー体感時間3時間後ーー


 大声で喚いたり叫んでも何も起きない。少し不安だ。


 ーー体感時間5時間後ーー

 ちっともお腹が空かないしトイレが行きたいとは思わなかった。すごく暇だなぁ。


 ーー体感時間12時間後ーー


 しばらく泣きたくなるが泣いてもしょうがない。いつかは終わる時がくる。きっと……。


 ーー体感時間36時間後ーー

 だいぶ経過したようだが何も起こらないな。お母さんとお父さん心配してるだろうか。


 ーー体感時間6580時間後ーー

 鳴り響くおもちゃも慣れてきた。

 私たちは友人達といろいろと会話するようになった。

 例えば好きな食べ物とかゲームなどいろいろな会話する。


 ーー体感時間385075時間後ーー

 もう慣れてきた。すでにみんなと打ち解けてるし。大丈夫だから。

 と、そんな風に思ってると蝉のおもちゃが鳴り響くのやめた時、風景が切り替わる。


 「4」


 私は気づいたら、病室にいた。

「幸子さん」

「はい?」

 そこで名前が呼ばれた。

「どうですか?ずいぶんと長い間眠っていましたけど?」

 看護師さんがそうつぶやくと私は安心してため息吐いた。どうやらサイミーン術にかかり長い間眠っていたようだ。

「すみません。自分どのくらい眠っていたようですか?」

 すると看護師さんはニコリと微笑んで黙ってそのまま手鏡を渡された。

 その時、ハッと青ざめて私は思わず手鏡を落としてしまう。


 ーーなぜなら、自分自身しわくちゃのおばあさんになっていたから。


 その時、私は泣きじゃくるようにわめいてしばらくそのまま意識を失った。


 「5」


 ーー「幸子の部屋」ーー


 私が再び目覚めると自分の部屋にいた。

 そこで慌てて自分の顔を確認しようと一階にある鏡を見ると元の幼い顔であることにホッとした。

 アレは悪夢なんだなと私個人的に安心した。

 カレンダーを見ると誕生日はずいぶんと長い先だから、私としてはずいぶん長い夢を見てる感じだった。


 ーー「野花小学校内」ーー


「おはよー。楓さん」

「おはよう幸子さん。あら?ずいぶん昨日より身長伸びてる感じしない?」

「え?いつも通りじゃない?キノセイよ」

「そう……」

 楓は何か気になっていたけど、私はいつものように普段通り日常生活を送っていた。次の8月の誕生日に迎える頃にはサイミーン術とかいうブームは起きず代わりにスイカ割りのミュージック載せてバズる動画が流行っていたので私の誕生日はみんながスイカ割りするバズる動画を公開して私としては忘れない誕生日になった。


 サイミーン術 完

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?