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第八話「月がきれる」

 「1」


 ーー「鐘技家」ーー


「おばあさま。お団子できました」

「ありがとう。さ。お月様でも観ながら食べましょう」

 私とおばあさまは早速お団子を持ちながら庭先で眺める十五夜のお月様を観る。

「おや、今日は綺麗な満月ですね。お嬢も月がきれますかね?」

 と、黒岩は冗談を言う。

「黒岩。そんな事を言いますと月がからね」

「ははは。お嬢のその怪異談も好きですね。また披露して下さいな」

「うむ。私も久しぶり聴きたいわね」

 と、みんながあの怪異談を推してるので私も気持ちよく披露する。

 この怪異談を聴いた者は不気味な野薔薇を聴かせるからーー。





 ーー「????」ーー


「月がきれいにきれた」

 私の目の前に満月がスパンと割れた。

 いや、そういう表現は可笑しいが正確には月が斜めにズレてるのだ。

 私以外にもちらほらいる。

 あの満月にズレてない?とか。

 あの満月みると調子狂うとか。

 あの満月きれてるわねとか。

 全て同意する。

 私たちは違和感を感じてなかったこの時までは……。


 ーー「鐘技高校」ーー


「おはよう♪」

「おはよー」


 いつも通りのクラス。

 先日、満月がズレてるとSNSで拡散して話題になったが、画像を見る限りどこも満月がズレるとかきれるとか見当たらなかった。

 しかし、私のように月がズレてることはたしかであった。

「ねーねー。見たSNSの月の話題♪」

 クラス中ではやはり満月がズレる話題になってるようだ。

 しかし、クラスのみんなはうさんくさがあったのか、次第にそのうわさは沈静化しつつあった。

 そして退屈な授業終えて放課後になり、私は所属してる部活に向かった。


 ーー「部室内」ーー


「え?切れる満月の調査ですか?」

「ああ。だから、親御さんにきちんと許可得て部室に集合だ」

 部長の提案により、私たち天文部は満月の調査を開始することになった。


 ーー「夜の部室」ーー


「何も見えないですけど」

 部員のヒカリが望遠鏡で満月らしき覗いてるが何も起こらないようだ。

「貸してヒカリ」

 私は望遠鏡で満月を見てみる。

 特に変わらなかったがしばらくすると満月がズレたのだ。

「ズレたわ!みんな?……え」

 たしかに満月もズレた。

 しかし、私以外のみんなもズレたのだ。

「きゃあああああああ!?」

 上半身と下半身斜めにズレたのだ。

 そして私の見る風景もズレていく。

 そしてその場にいるズレたままーー。


 ーー「????」ーー


 私が目を覚ますと病院だった。

 みんなは私が突然倒れてびっくりしたらしい。

私は何も異常なくそのまま数日してから退院した。

 結局、満月のことについてわかったことがある。

 みんなは眼が赤く光っているのだ。

 それも、私以外に。

 だから、もしかしたらいつか私もーー。


 END



「おしまいです」

 みんなは拍手してくれた。

「お嬢も立派な怪異談語りも上手くなりましたな」

「ありがとう黒岩」

「これなら、次期当主として問題ありませんね。友紀」

「はい!」

「あなたが頼りわよ。この鐘技家再興するのは」

「はい!頑張ります」

「ちがーう。そこは

「あ、ううう。やれます」

「ははは。手厳しいですね」

 私たちは石山県で行われる怪異談語りを行われる。

 そこで見事に眼をかなえば石山県の全ての統治権を委ねられる。

 いや、実質的には名誉扱いである。

 前は八木家に奪われて鐘技家が長年独占していた統治権を全て奪われた。

 だから、私たち負けることはできないのだ。

 次の怪異談語りは20〇〇年に行われる。

 その日までにいつか必ず全て取り戻す時までーー。


 私の怪異談は不気味な野薔薇を聴かせる。


 出演登場人物


 鐘技友紀


 鐘技名美


 黒岩浄海


 安良田恵


高井昭子


玉木珠緒


北山正夢


????




 月がきれる 完

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