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第二十七話「夢想家の君はとべる②」

「7」



『夢想家のおまえ、どうした?

 まだ、飛べないことを気にしてるのか?

 やれやれ、俺が手を貸してやるよ。

 あの、一番輝く星空までな。


 さあ、とばせー!とばせー!の声を空に腹を含ませながら響かせてみろ!

 俺も一緒に叫ぶからな。

「とばせー!とばせー!」と、おまえの声が2階にいる俺まで届くようにな。


 ほら、届いただろ?おまえの声が。

 この調子で、あの星のてっぺんを目指そう。

「声が届かない?」「声が出ない?」いやいや、そんなことないさ。

 おまえの夢は、ちゃんと空に向かっている。心の中にある悲痛な叫ぶ声がな。


 夢想家のおまえ、諦めるなよ。おまえにはその力があるんだ。

 一緒に、あの光るてっぺんの星まで掴み行こうぜ。

 作:勝山大地』


 ーー「勝山自宅07時25分」ーー


「ふえ?」

 目を覚ますと俺は勢いよく身体を起こす。

 どうやら、また例の夢を見てたらしい。

 やけに外が明るいので俺はスマホ見た。

「げ!?遅刻じゃん」

 俺は朝飯を食べる暇おろか、昼飯の弁当を作らず急いで出た。


「遅い」


 夢見が仁王立ちで御立腹。

 どうやら迎え来るのが遅かったのでわざわざ夢見が俺の身を出向いたようだ。

「あー。わるいわるい。今から走って行こう」

「……その前にひとつ聞いていい?」

 俺は駆け足の準備してる最中に夢見は尋ねてきた。

「なんだよ?」

「……もしかして、わたしの夢の中みた?勝、電車にいたでしょ?」

 俺は駆け足の音頭を辞めた。

「え……?どうしてそれを」

「見た!!見たのね!?嘘じゃないよね?わたしは勝が声をかけられてびっくりしたから!!びっくりびっくりびっくり!!」

 夢見は俺に凄まじい剣幕で叫んでる。

「お、おい!?落ち着けよ!俺はたしかに夢見がいた夢を見たよ。最初怪獣と戦っていた頃から」

「見たんだ……」

 夢見はしばらくすると俯いてブルブル震えていた。

「え?え?どうした夢見?夢見さーん!おーい。もしもーし」

 すると夢見が突然俺のシャツの首元を両手で掴んだ。

「見たんだー♪見えたー♪見えたんだ♪」

「うぉっぐげぇよ、よせ」

 夢見は喚きながら俺のシャツをされるがまま思いっきりグラグラ揺らした。

 俺はしばらく夢見が落ち着くまで自宅にいて学校に遅刻した。


 ーー「野花高校職員室前11時15分ーー


 はぁと俺はため息を吐いた。

 ため息を吐くと幸せが減るってどこかで聞いたことあるけど今更感だった。

 俺と夢見は梅田先生にこっぴどく叱られて、教頭はまぁまぁと形で宥めていた。

 俺たちは罰として2人で学校内男女トイレ全て清掃させるまで帰宅許されないと言われた。

 俺と夢見はトイレ清掃用具持って1階のトイレへ向かった。


 ーー「男子トイレ一階11時35分」ーー


「ねー勝?トイレ清掃終わったら、わたしと放課後ちょっと付き合って」

「終われたらなー」

 俺はほとんどピカピカの便器周りを雑巾で磨く。

 夢見は窓ガラスを磨いてる。

 俺は便器に息を吹きかけてさらに力を込める。

「ふふ。まさかわたしの夢を見られる人は勝で2人目だよ」

「へー。俺の他に夢見の世界に入ったやついるんだ」

 俺は少し驚いた程度で構わず作業する。

「最初の方がねー。わたしの親戚のお兄ちゃんなの。小さい頃よくとんでよく遊んだの。実際わたしと一緒に空を飛んだの。パタパタ」

 夢見は空を飛ぶ鳥をイメージの羽ばたく動作をする。

「はいはい。で、お兄さんは今どうしてるの?」

「……お兄ちゃんはわたしが高校上がる時に亡くなったの」

 夢見は悲しそうな声で言った。

「……悪い。聞くもんじゃなかったな」

「ううん。気にしないで♪わたしは勝がとべる相手でよかったよ」

「そうか」

 俺たちはしばらく雑巾でトイレ全体を磨きまくった。

 と。

 と。

 と。


「8」


 ーー「体育館内16時08分ーー


「で、どうするんだ夢見?」

 俺たちは学校内のトイレ清掃を全て磨き終えて体育館に向かった。

「そうね。もう少ししたら、来るから」

 夢見は体育服に着替えてストレッチしてる。

「よう。おまえら、持ってきてやったぞ」

 ぞろぞろと野球部員が飛び箱を抱えてやってきた。


「ありがとう!そこに設置して!そうそう。そんな感じ」

 と。

 夢見の指示のもと、飛び箱を設置していく。

 (夢見はいつのまに野球部員を手懐けたんだよ)

 と。

 で、最後のジャンプ台に『と』の油性赤マジックペンで書かれた紙に貼り付ける夢見。

 (おい。梅田先生に怒られても知らないぞ)

 と。

 俺はため息を吐いた。

「夢見、まさかと思うがこれを跳ぶのか?」

「そうよ。わたしの夢とべたでしょ?」

 常識ではあり得なかった。

 いや、彼女は頭のボルトが取れていたからか。

 俺たちの目の前には飛び箱20段くらいあった。

「じゃあ、いくわよ!」

「またんかい!」

 今からとぼうとする夢見の肩をつかんだ。



「これでいいか?勝山」

「ああ。それくらいなら大丈夫だろ」

 俺は頭がとんでる夢見の代わりに飛び箱の段数を減らした。

「勝は心配性なのよね」

 夢見は不満そうだが渋々したがってくれた。

「じゃあ、俺らは帰るからな」

 飛び箱を設置した野球部員は帰っていた。

 (これでも減らしたとはいえかなりあるな)

 飛び箱は6段もあった。運動音痴な夢見とはいえこの高さでとべるとは思えなかった。

「おい。今やめるなら、今のうちだぞ?」

 と。

 俺の忠告に対して、夢見はなんでもないかのように。

「わたしはとべるの見てなさい」

 夢見はとべる気まんまだ。

 そして夢見は飛び箱から離れて勢いよく走って叫びながらとんでジャンプ台に踏みつけてとび超えーーーーーー……なかった。

 夢見は飛び箱にぶつかり身体ごと崩れて巻き込まれた。

「はぁ。忠告したのに」


 ーー「保険室17時05分ーー


「で?おまえ達は、また一体何をやらかしたんだ?」

「無視家には関係ありませぬ~」

 夢見は先生に根に持ってるようだ。

  夢見は女性保険医から包帯を巻いてる。

 ハァーと俺は深いため息。何度目だ?

 見廻りきた先生が来てこっぴどく俺まで叱られてしまった。

 夢見は先生が来るまで飛び箱に何度も飛んでみたが結局一度も飛べなかった。

「先生、俺は忠告をきちんとしましたからね……」

「ま、おまえらが何を企んでるかは知らんがこれ以上、俺の仕事増やすな、よ!」

 先生はこの後、仕事あるのか保険室から出た。

「く~。何よ!あの言い草こんな健気な女の子にねぎらう言葉ないし。だからあいつモテないのよ!虫でも結婚しろー!!」

「……先生にモテないことバラすなよ」

「見てなさい!わたしがとべることを証明してやるんだから!」

 と。

 とべることなるともう俺でも手がつけられなくなる。

 夢見が意地になってるの見て俺は頭が痛くなった。


「9」


 ーー「勝山自宅20時30分」ーー


 帰りに夢見と別れた後、俺はいつものラーメン屋さんは寄らず、久しぶり自宅で料理して食事した。

 ご飯、ネギ味噌汁、冷奴、たくあん以上だ。

 朝飯とほぼ同じだ。

 俺の自宅からはなかなかスーパーとかコンビニは寄れないのでまとめて買ってる。

「……たまにテレビをつけるか」

 俺はテレビのリモコンをいじる。

『昨日未明、鐘技市に向かう電車が鉄道橋から海上に落下事故がありました。現在復旧作業してます」

 どこの局もそのニュースみたいな似たようなばかりだった。

「ゲームでもやるか」

 俺はすぐチャンネルを消して自分の部屋からゲーム機カネワザストームを取り出していくつかゲームを遊んだ後就寝した。


 ーー「????」ーー


「かつ……かつ……」

「……ん?」

 誰かが俺の名前を呼んでる。

 俺は目を開けるとそこに夢見がいた。

 俺は道路に寝てたようだ。

 周りは何処か見たことある建物。

 俺が少しやってたゲームにそっくりだった。

 俺は身体を起こし夢見に尋ねた。

「夢見……ここは一体どこなんだ?」

「勝、あれを見て」

 夢見は方向さした。

 ドット絵の夢見さんが何やら埋めていってどこかへ消えた。

「ネギ……?」

 道路に上手くびっちりとドット絵のネギ一本生えていた。

 俺が今晩の晩飯食べたネギに似てた。

 俺たちは生えてるドット絵のネギに近づく。

「ふつうのネギみたいな?」

 俺はそのネギに触れようとすると、ネギが勢いよく伸び続ける。

「うぉっ!?」

 俺はネギを見て後退する。

 ネギはどんどん伸び続けていき、天空の雲まで伸びていく。

「ひえー」

 俺たちはネギを眺めていた。

 夢見はふと何か気づき、ネギと別の方向に走る。

 夢見が向かう方向には大量に積まれた缶。

 そこに夢見は大量の缶をかきわけてる。

「夢見一体何してるんだ?」

「ちょっとだまってて!えーとあった」

 と。

 かきわけた缶の中にとうもろこしのつぶつぶ粒のコーンが入った缶だった。

 夢見ゆっくりとフルタブを開ける。

 中のコーンの粒が勢いよく飛び出す。その無数の粒が物体を形成してとぐろを巻いた階段の龍ができた。

 夢見はふと何か思ったのか、龍の階段上り頭の上に乗りこむ。

「お、おい!」

 龍は夢見が乗り込んだ直後一気に上昇して夢見はどんどん小さくなっていく。

 どうやら天空上のネギを目指してるようだ。

 夢見を確認できなくなるとそこで俺は意識を失う。


  ③へ続く。

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