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第四十話「目玉焼き」

「1」


 ある1人暮らしの中年男性のアパート自室の壁に丸い目のような黒いシミができていたの。

 シミが気になった彼は汚れを落とすためにいろいろと手を尽くしたがなかなか取れなくて男性は諦めていたの。

 そしてしばらくすると先程違う場所からまた丸い目のような黒いシミが現れたの。

 彼は特に気にせず無視していた。

 そして次第に次々とシミが現れてきたのね。

 そして次に最初のシミがまるで人間の眼の形をはっきりするようになってきた。

 彼はまるで見られるような感じだったから、張り紙を貼って眼を隠したけど他の眼のシミが次々とはっきり現れるようになってきた。

 彼はすぐ引っ越ししてもまたその一室で眼が出てくるから次々と出てくる眼なのね。

 もはや彼はノイローゼになっていたわ。

 そしてしばらく彼のアパートが火事になった。

 後からわかったけど彼は焼身自殺を図り一室ごと燃やしたの。そして消防車が駆けつけて必死の消化活動の末に鎮火されたわ。

 もうほとんど黒焦げ状態だったわ。

 で、そこの部屋に彼の丸焦げ遺体とそこに大量に積もれた何か。

 そうそれはヒトの目玉のような物がたくさん置かれていたの。そこから焼いた腐った卵のような匂いがしてたわ。


「……以上です」


「……楓さんの怪異談はゾクとするようで怖いわね」


「ありがとうございます。和子おばさま」


 私は夏場に陽の当たる中、近所の八木楓さんと世間話してるときにふと楓さんの趣味している怪異談を聞きたくなったのでいくつか怪異談を披露してくれた。

 特に私が気になったのは怪異談目玉焼きである。

 私は朝食に目玉焼きを食べていたから、少し想像して気分が悪くなり吐き気に耐えていた。


「ありがとう。じゃあ私、洗濯物取り込まないとね」


「はい。ではまた」


 私は楓さんの話を途中に切り上げて自宅に戻った。

 私はこの時目玉焼きが頭の中から浮かび消え去ることができなかった。


「2」


 私がお風呂場掃除していると壁に丸いシミのような物ができていた。

 私はスポンジと洗剤をよくつけて擦る。

 しかしなかなか落ちなかった。

 私は諦めずにいろいろ手を尽くしたが落ちなかった。

 私はあの目玉焼きが思い出してしまいこの壁のシミは落としたかった。

 ただよくよく考えてみるとあの怪異談は楓さんの実話でもなく創作怪異談である。

 私はふとシミを落とす作業やめて次のトイレ清掃に向かう。



 ーー「トイレ」ーー


 ここでも私は念入りにトイレ清掃する。

 壁に丸いシミのような物ができていた。

 私は壁のシミを落とそうと必死に壁を雑巾でふくがなかなか汚れが落ちなかった。

 いくらやっても落ちなかったので諦めて次の作業に取り掛かった。


 ーー「1階の廊下」ーー


 私が廊下で雑巾をみがいてると、階段からかけあげる音がした。


「誰かいるの?」


 誰も返事しなかったがたしかに人のいる気配がした。


「3」


「どうした?和子。ボーとしてるぞ」


「……あ。ごめんなさいあなた」


 私は夕飯の食事中に考えごとしたみたいでご飯に手をつけなかった私は食事を再開した。夕飯の合間につけてるお笑いタレントのコントにも頭が入らず私の頭の中にはあの丸いシミが気になっていた。


 ーー「2階寝室」ーー


 私は夫と自分の布団をしいて就寝した。

 夫のうるさいいびきはすでに慣れていたが、どうも寝付けなかった。

 まるで誰かに見られてるような感じがした。

 おそるおそる目を開けると、部屋中に複数の目が私をじーと見つめていた。

 私は恐怖を感じてパニックになった。

 夫は私の叫び声にすぐさま起きて、明かりをつけて私をなだめてくる。

 そして壁の建物に人間の両眼のシミがはっきりと現れていた。


「4」


「どうですか?あかねさん」


 様子がおかしかった私を見た楓さんは、事情を説明して友人の霊能者でありおはらいできる黒木あかねさんに壁を見てもらうことした。

 そしてあかねさんが私たちに向かって言った。


「んー、この子はそんなに悪くないわね。ただイタズラに菊池さんを怖がらせてたみたいね」


 私はホッと安堵した。

 よかった家の中に目玉焼きだらけしなくて済むと。


「まー。この子は一種の家の守り人というか座敷童の仲間みたいもんなのよ。この子も反省してるみたい。あとこの子にも食事を提供して欲しいらしいわ」


「あら。うふふ。よりにかけて美味しい食事を作るわね」


 私はなんだか可愛い子供が出来たのかのように喜んだ。

 私と夫の間には子供はいなかったから、私にとって新しい家族ができたみたいものだった。


「ごめんなさい。菊池さん。どうやら、私のせいで怖がらせてしまって」


「いいのよ。おかげで新しい家族が出来たもんだから」


 その時私はずっと壁の丸いシミを眺めていた。


 ーー「????」ーー


「ん」


 あかねは楓に手を出した。


「何かしら?」


 楓は惚けるがあかねは執拗に迫るので仕方なしに出した。


「何、これ?」


「ヤギキャンディよ」


「ク!?こ、こんなもんで釣られる私ではないわ。パク」


「しっかりと食べてるじゃない。チョロイン」


 と、あかねはヤギキャンディを平らげておかわりをうながしていた。


「5」


「あなた。ごはんよー」


 私は居間にいる主人を夕飯呼びかける。

 そして今夜の夕飯は目玉焼きである。


「和子。あの子にも食事作ったか?」


「ええ。作ったわ♪」


 私は毎日忘れずに二階の寝室にいるあの子にご飯を用意する。

 いつもご飯提供した後は、必ずきちんと全てお残しせず食べる。

 いつものように寝室で置いたとき私は寝室の戸を閉めて出るとき、物音がした。


 私はそっと戸を開けると、あっと驚いた。


 そこに幼い着物を着た少女が食事をしていた。

 そしてその少女は私に気づくと目玉焼きのおかわりをうながした


「6」


 ーー「数年後」ーー


私は朝食の準備をする。

 フライパンにサラダ油をひたして卵を割って目玉焼きを3つ焼いた。

 そして朝食が出来ると、私の家族を呼ぶ。


「あなたー、幸絵ー、ご飯よー!」


 私の家族が了解の返事して居間のテーブルに着席して家族3人団欒として食事を取る。

 娘の幸絵は去年市役所でようやく養子縁組受理して正式に私たちの子供になった。一応どこの子供なのかかなり質問回答用意したけど知人の亡くなった母親が蒸発した子て言ったら、なんとなく察して何事もなく受理されたからほっと安心した。そして幸恵は小学校で素敵なお友達ができたみたいでいつも家に遊びに来ている。

 そして幸絵は相変わらず目玉焼きを好んでよく食べる。

 新しい家族が増えるきっかけになったこの怪異談を私たちの宝物として今でもその怪異談目玉焼きを家族3人で聴いている。


 目玉焼き 完

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