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第12話


 僕たちは雑談をしながら、モンスターを求めて草原を歩き回った。

 すぐに新たなモンスターの群れが出現したため、今度はニャムが一掃する前に、僕もモンスター退治に参加することが出来た。


「風よ吹き荒れろ」


 草原で炎魔法を使うのが危険だということは分かったので、今度は風魔法を使ってモンスターを倒すことにした。

 しかし風魔法もあまりモンスター退治に適した魔法ではないようだ。なぜなら、風魔法によってモンスターが飛ばされるので、ドロップ素材を回収するために飛ばされたモンスターを追いかけなければならないからだ。


「雑魚敵相手なら、杖で殴った方が早くない?」


 素材を回収するために走り回る僕を見て、我慢できなくなったのだろうナターシャが言った。


「それだと魔法使いのアイデンティティが……魔法を使ってこその魔法使いだから」


「魔法は要所要所で使えばいいニャ。もっと臨機応変に対応するニャ」


 確かにその通りなのだけど。

 せっかくのファンタジー世界だから魔法で敵を倒したい、と僕の中の少年の心が言っている。


「ほら、魔法を使わない魔法使いは頼りにならないから」


「もしリューさんが瘴気を無効化する魔法を使えるようになったら、かなり頼りになりますよ。それこそ普段はずっと寝ていても良いくらいです」


「無効化魔法って、そんなに重要なの!?」


「瘴気はこの世界における最大の障害ニャ。あれさえ無ければどこへでも行けるのに、あれのせいでみんなの行動範囲が狭まってるニャ」


 確かにこの世界のどこへでも行くことが出来るようになったら、格段にエンジョウジサエコ発見の可能性が高くなる。その障害である瘴気は何としても無効化したいものだ。


「リューさん、そもそも魔法はどうやって使ったんですか? 後学のために教えて頂けると嬉しいです」


「どうやってと言われても……こう、詠唱をしながら身体の中の力を手に集中させて、その力をさらに杖に送る感じで……」


 僕が杖を構えながら説明すると、ナターシャがポンと手を叩いた。


「分かったわ。厨二病を爆発させるのね!」


「言い方! その通りだけど!」


 ナターシャにツッコみつつ、ふと横を見ると、僕以上にナターシャの「厨二病」という単語に反応している人がいた。

 ローレンだ。

 ローレンは自身の頭を抱えながら、ふらふらとしている。


「厨二病ですか。黒歴史なので、あまり聞きたくない単語ですね……」


「ローレンにもそういう痛い過去があったの?」


「痛い過去と言わないでください。ただちょっと、怪我もしていないのに包帯を巻いていただけです」


 うわあ、純度百パーセントの厨二病だ。


「包帯で荒ぶる右手を封印してたということかニャ?」


 ローレンの黒歴史を聞いたニャムが楽しそうにしている。


「包帯の下に魔法陣を描いちゃってたりして」


 ニャムの悪ふざけにナターシャも乗り始めた。


「まさか第三の目も持ってたニャ?」


「普通の目では見えないモノが見えちゃうアレね!?」


 二人の猛攻撃に、もうローレンは瀕死のようだった。


「恥ずかしいので話を膨らまさないでください!」


 そう言ったローレンは、しかし二人の言葉を否定はしなかった。


「魔法陣も描いてたし、第三の目も持ってたんだ……」





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