僕たちは雑談をしながら、モンスターを求めて草原を歩き回った。
すぐに新たなモンスターの群れが出現したため、今度はニャムが一掃する前に、僕もモンスター退治に参加することが出来た。
「風よ吹き荒れろ」
草原で炎魔法を使うのが危険だということは分かったので、今度は風魔法を使ってモンスターを倒すことにした。
しかし風魔法もあまりモンスター退治に適した魔法ではないようだ。なぜなら、風魔法によってモンスターが飛ばされるので、ドロップ素材を回収するために飛ばされたモンスターを追いかけなければならないからだ。
「雑魚敵相手なら、杖で殴った方が早くない?」
素材を回収するために走り回る僕を見て、我慢できなくなったのだろうナターシャが言った。
「それだと魔法使いのアイデンティティが……魔法を使ってこその魔法使いだから」
「魔法は要所要所で使えばいいニャ。もっと臨機応変に対応するニャ」
確かにその通りなのだけど。
せっかくのファンタジー世界だから魔法で敵を倒したい、と僕の中の少年の心が言っている。
「ほら、魔法を使わない魔法使いは頼りにならないから」
「もしリューさんが瘴気を無効化する魔法を使えるようになったら、かなり頼りになりますよ。それこそ普段はずっと寝ていても良いくらいです」
「無効化魔法って、そんなに重要なの!?」
「瘴気はこの世界における最大の障害ニャ。あれさえ無ければどこへでも行けるのに、あれのせいでみんなの行動範囲が狭まってるニャ」
確かにこの世界のどこへでも行くことが出来るようになったら、格段にエンジョウジサエコ発見の可能性が高くなる。その障害である瘴気は何としても無効化したいものだ。
「リューさん、そもそも魔法はどうやって使ったんですか? 後学のために教えて頂けると嬉しいです」
「どうやってと言われても……こう、詠唱をしながら身体の中の力を手に集中させて、その力をさらに杖に送る感じで……」
僕が杖を構えながら説明すると、ナターシャがポンと手を叩いた。
「分かったわ。厨二病を爆発させるのね!」
「言い方! その通りだけど!」
ナターシャにツッコみつつ、ふと横を見ると、僕以上にナターシャの「厨二病」という単語に反応している人がいた。
ローレンだ。
ローレンは自身の頭を抱えながら、ふらふらとしている。
「厨二病ですか。黒歴史なので、あまり聞きたくない単語ですね……」
「ローレンにもそういう痛い過去があったの?」
「痛い過去と言わないでください。ただちょっと、怪我もしていないのに包帯を巻いていただけです」
うわあ、純度百パーセントの厨二病だ。
「包帯で荒ぶる右手を封印してたということかニャ?」
ローレンの黒歴史を聞いたニャムが楽しそうにしている。
「包帯の下に魔法陣を描いちゃってたりして」
ニャムの悪ふざけにナターシャも乗り始めた。
「まさか第三の目も持ってたニャ?」
「普通の目では見えないモノが見えちゃうアレね!?」
二人の猛攻撃に、もうローレンは瀕死のようだった。
「恥ずかしいので話を膨らまさないでください!」
そう言ったローレンは、しかし二人の言葉を否定はしなかった。
「魔法陣も描いてたし、第三の目も持ってたんだ……」