しばらくモンスターを狩っていると、ピピピピピ、と電子アラーム音が鳴り響いた。
このアラーム音は、きっとゲームをログアウトする時間になった合図だ。
「タイムリミットみたいだね」
「そうだったニャ。新人にはタイムリミットがあることを忘れてたニャ」
「リューは今日始めたばっかりだもんね。あたしもうっかりしてたわ」
確かに三人のアラーム音は鳴っていない。鳴っているのは、三人よりも後にゲームにログインした僕のアラーム音だけだ。
「慣れてくるとプレイ可能時間が長くなるの?」
「はい。私たちの中で一番プレイ歴の長いニャムさんは、最初に来て最後に帰りますよ」
名指しされたニャムは、右手を大きく上げて得意げな顔をしている。
「このゲームに適正があると分かれば、タイムリミットはどんどん伸びるニャ。慣れてきたら自分でプレイ時間を決められるようになるニャ。ニャムは一日のVRMMO利用時間マックスまでプレイが可能ニャ。ニャム先輩と呼んでも良いニャ。ニャム様でもニャム神様でも構わないニャ」
「最初は安全面を考慮して、全員一律一時間で帰還することになっているんです」
ニャムの言葉を若干無視してローレンが説明を補足した。もうタイムリミットだから、ふざけている時間が無いのだろう。
「次にログインするときは、どうやってみんなと合流したらいいの?」
「ログインしたら、この場所で待っててくれればいいわ」
「僕からログインしたって合図は出せないの?」
「パーティー契約をすれば可能ですが、それはまた次の機会にしましょう。本当にパーティー契約をしても良いのかどうか、家に帰って再度考えた方が良いでしょうし。それよりも、今は早くログアウトをしてください。こういうのは始めが肝心ですので」
「確かに。ルールを守らないテスターだと思われたら、今後ゲームをやらせてもらえなくなるかもしれないもんね」
ローレンの言う通り、何事も始めの印象が重要だ。社員に従順なテスターだと思ってもらわなければ。
「ニャムたちは、しばらくはこの付近で活動してやるニャ。だからリューを見つけたら、すぐに迎えに行くニャ。感謝するがいいニャ」
「待ってる間、暇だったらその辺の雑魚モンスターを倒してて。この辺のモンスターなら一人でも平気でしょ?」
「分かった」
「次はパーティー契約をして、スムーズに合流できるようにしましょうね。もちろんリューさんがパーティー契約の内容を把握して、正式にパーティーに入っても良いと感じたらですが」
僕に向かって手を振る三人を見ながら、ログアウトの準備を始める。
「じゃあまたね、リュー」
「うん、またね」
『ログアウトの準備が完了しました』
どこかからアナウンスが聞こえた瞬間、僕の視界は真っ暗になった。
* * *