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第18話


 ナターシャとニャムと一緒に町へ向かうと、町の入り口では一人の女性がおろおろとしていた。


「誰か助けてくれませんか?」


 女性に近付くと、女性は僕たちに話しかけてきた。

 女性の言葉を聞いたナターシャは、何かに納得したようにうんうんと頷く。


「これは特殊クエストね」


「特殊クエスト?」


「酒場でクエストを受注する以外にも、定期的にこうやって特殊クエストが発生するの。クエストをクリアすることで報酬が貰えるわ」


「基本的に特殊クエストは参加しないと損ニャ。酒場でのクエストよりもクエスト達成報酬が美味しいニャ」


 女性は僕たちの会話には興味が無い様子で、ずっとおろおろとしている。そしてまた同じ言葉を口にした。


「誰か助けてくれませんか?」


 プラントワールドが他のゲームと同じなら、これはNPCの特徴だ。

 NPC、ノンプレイヤーキャラクターは、決められた言葉を何度も口にする。


「同じことを言ってるってことは、彼女はNPCなんだよね?」


 確認のため二人に尋ねると、二人からは肯定の言葉が返ってきた。


「クエストを頼んでくるのはNPCよ。それに町を歩いてるモブっぽい人たちもNPCだから、似たような言動を繰り返すの」


「話してみると、すぐにプレイヤーかNPCか分かるニャ。あの女はNPCニャ」


 やっぱりプラントワールドにもNPCが存在しているのか。

 しかし二人の話を聞く限り、プレイヤーとの見分け方は簡単そうだ。


「さっそくクエスト内容を聞いてみましょうよ」


「そうだね。クエストを受けるか受けないかは、内容を聞いてみないことには判断できないもんね」


 僕たちを代表して、ナターシャが女性に声をかけた。


「何があったの? あたしたちで解決できることなら力を貸すわよ」


「妹が悪党に連れ去られてしまったのです。妹を助け出してはくれませんか?」


「悪党……居場所は分かってるの?」


「妹を連れ去ったのは、有名な五人組の悪党です。この村の東にある森の奥に洞窟があります。彼らはその洞窟を根城としています」


 どうやら悪党の居場所は分かっているらしい。その洞窟へ行って悪党から妹を連れ帰ってくるクエストのようだ。


「そこへ行って悪党どもをぶちのめして妹を奪還すればいいわけね?」


 ナターシャが女性にクエスト内容を確認すると、女性は期待の眼差しを向けてきた。


「お願い出来ませんか?」


「任せるニャ!」


 女性の言葉に答えたのは、ナターシャではなく、横で話を聞いていたニャムだった。


「ちょっと!? 即答しちゃっていいの!?」


「大丈夫ニャ。これは簡単な類のクエストニャ」


 ニャムは悪びれる様子もなく言い切った。


「そうなの?」


「相手はモンスターじゃなくて人間ニャ。強さはたかが知れてるニャ」


「そうね。ニャムなら一人でもクリア出来ちゃうクエストよ」


 ナターシャもニャムの言葉に同意した。


「じゃあ初めてのクエストとしてはちょうどいいのかな」


「その通り。リューはまだこの世界にいられる時間が短いんだから、早く行きましょ!」


 ありがとうございます、という女性の言葉を背中に浴びながら、僕たちは悪党のいる東の森へと向かった。





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