「ご馳走様でした。」
私はどうにか、食事を終えた。
「紗季、服を着替えなさい。」
「え?どうして?」
「良いから…小綺麗で品の良いものに着替えなさい。」
「どこか行くの?」
「早く!」
全く意味が分からない。
何か、大変なことがあったのは間違いないけど、それが何なのかはわからない。
両親の親は早くに亡くなってるし、親戚もいないって話だったから、そういうことじゃないだろうけど…
ってことは、お父さんが誰かの連帯保証人にでもなって、多額の借金を背負わされた…とか?
もしかしたら、今から夜逃げでもするんだろうか?
いろんなことを考えれば考える程、不安は大きく広がっていく。
「紗季、早くしなさい!」
「は、はいっ!」
階下からお父さんの声が響いて、私は焦って服を着替えた。
(あ……)
私は、小林さんからもらったネックレスとクッキーをコートのポケットに突っ込み、急いで階段を駆け下りた。