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第154話

「……あなたは今でもその方を想っているのですね。」


「とんでもありません。

もう忘れました。」




それは強がり。

だけど、本当にそうしようとは思ってる。




私はフェルナンさんのことは忘れる。

だって、私はもうサキじゃない。

シャルアさんになるんだから。

フェルナンさんのことなんて、少しも知らないシャルアさんに…




「シャキア…本当にごめんなさいね。」


シャルアさんは、目にうっすら涙を浮かべていた。




「だから……シャルアさんが謝ることなんてありませんってば。

フェルナンさんは自分の意志で私から離れ、私もまた自分の意志で、フェルナンさんを忘れるんです。」


「ですが……」


「あ、そう言えば、ヴァリアンの王子様はどんな方ですか?

なんというお名前なんですか?」


フェルナンさんのことをこれ以上話したくなかったから、私は話題をすり替えた。




「ヴァリアンの王子は…ルーサー様とマーカス様とおっしゃいます。

ご長兄の方がルーサー様です。」


「どんな方ですか?」


「お会いしたのはもうずいぶんと前ですが…お二人共、とても素敵な方でしたよ。」


「そうですか。それは楽しみです。」




本当はそう楽しみではないけれど…

今はそう言うしかなかった。



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