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第166話

「シャルア王女様、本日はお時間を割いていただき、感謝致します。

ご静養後、お体の調子はいかがですか?」


マリウスさんは、寝台の傍に跪き、私に声をかけた。




「ありがとうございます。

お陰様で、ずいぶんと良くなりました。」


「それはようございました。

今日は、王女様におたずねしたいことがあって参りました。

こちらは、我が国の宰相のフェルナンです。」




マリウスさんの言葉を聞いて、私は思わず声を上げそうになるのを懸命に堪えた。




今、確かに『フェルナン』って言ったよね…

私は、カーテンの向こう側を見ようとしたけれど…

マリウスさんの後ろにもう一人いて、金髪なのは何となく見えたけど、顔ははっきりとは見えなかった。




でも…なぜ?どうして?

フェルナンさんとは別れたはずなのに、どうしてマリウスさんと一緒にいるの?

驚きと焦りで、鼓動がどんどん速くなる。




「どうぞ、こちらにおかけください。

ところで、マリウス様…シャルア王女におたずねになりたいというのはどんなことですか?」


サンドラさんが、マリウスさんに問い掛けた。




「はい、実は、サキという者のことをお聞きしたかったのです。

以前、お会いした時、ここにいた者です。

私と同行していた時は記憶をなくしていたのですが、ここに来て記憶を取り戻し、自分はこの城の侍女だと申しておりました。

ところが、私の探したところ、この城にサキという侍女はおらず、サキの行方はわからなくなっているのです。」


冷汗がどっと噴き出した。

どうしよう?

なんて返事をすれば良い?

マリウスさんが私を探しているなんて…しかも、フェルナンさんも一緒だなんて…

私は完全にパニックに陥っていた。



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