湖のほとりを沿うように、北へ向かって車は走っていく。ちょうど三、四十分ほど経ったころだろうか。風に乗って漂ってくる
「さぁて、到着」
「ありがとうございます……」
車はだだっ広い
「すぐ事務所へ行こう。ついてきて」
ライルさんはそう言うと、車のエンジンを切り、ドアをバタン、と閉めて、歩いていく。僕も慌てて車を降りた。周囲の景色を気にする余裕もなく、ライルさんの背中を追って、荷物を引きずりながら、彼の少し後ろを歩く。駐車場から
馬だ……。
「おーい、こっち! 早く」
「あっ、はい!」
ライルさんに呼ばれ、返事をする。事務所はそのさらに先にあるようだった。ライルさんは小さな建物のドアを開けて、中へ入れ、と言うかのように
僕はおそるおそる、その扉の中へ足を踏み入れた。中にはふたつの黒い革のソファが向かい合って置かれ、その間には大きな木製のローテーブルが置かれている。大きな木の切り株を薄く切って、そのままテーブルに加工したような、しゃれたテーブルだ。
その奥には小さなカウンターがあり、部屋の棚には
「トーマス……」
ぽつりと呟く。そうして、しばらく写真を見つめていると、不意にバタン! と音がした。直後、野太い声が耳に飛び込んでくる。
「やあやあ! ようこそ、ウィンダミアへ!」
「あ……っ」
「君がオリバーくんだね。よく来てくれた!」
カウンターの奥からやってきたのは、鼻の下にちんまりした
「あ、あの――」
「私はトーマス・ウィリアムズ。このクラブのオーナーだよ」
「ウィリアムズさん……! あの、このたびは本当にありがとうございました。祖父がくれぐれもよろしくと――」
「あぁ、もう、そういうかたっ苦しいあいさつはなしなし!」
僕の言葉を
「それからね、私のことはトーマス、でいいから」
「はい、トーマスさん……」
「ようし。それじゃ、遠路はるばるやって来て早々悪いんだが、すぐ仕事に取り掛かってもらおうか。うちは猫の手を借りても足りないくらい忙しいんだよ。おい、ライル!」
「……ここにいますよ」
ライルさんは壁に寄り掛かり、腕を組みながら、
「あぁ、そこにいたか。まず、オリバーを宿舎に案内してやってくれ。部屋は二〇二号室だ」
「はい」
ライルさんが返事をすると、トーマスさんはズボンのポケットを探り、鍵を投げた。それをライルさんはうまくキャッチする。ごく慣れたやり取りのようだ。
「それが終わったら、すぐに着替えて
「はい。……あれは、どうしました?」
「あれ?」
「スノーケルピーです」
「あぁ……、あいつはだめだ。あんなのを新人に任せたら殺されちまうよ。ライル、当分はお前さんとオークリーで分担して世話してくれ」
「はい」
そう言うと、トーマスさんは「それじゃ」と言い残し、カウンター奥の扉の向こうへ消えていった。まるで嵐が過ぎ去ったあとのように静かになった部屋の中で、僕は
「同一人物だよ。昔は
「へえ……」
「
「そうなんですか……」
「行こう。宿舎に案内するよ」
ライルさんはそう言って、再び