長き年月の果て、風に運ばれる砂のように人々の記憶より名も忘れさられたこの世界は、人間の住む4つの大陸と数多くの小島で形成されていた。
世界の3分の2以上を占める海によって隔絶されたそれぞれの大陸は、
そして、3つの大陸のうちで最も小さな大陸が、このクラーナ大陸である。
8割近くをおおった荒地と広野は痩せた土地の証拠。
取れる作物の限られる中、気ままに吹きつける熱風と、風に運ばれてくる熱砂により容易に不作となり、飢え死にする者も少なくない。
そんなぎりぎりの日々を繰り返しながらも、人々は数えるほどしかない緑地を町、あるいは中継地として町同士で連携し、町の周囲に結界を張り巡らせることで、人には持ち得ない超常能力を用いては人の生気を喰らう悪鬼・魅魎たちから命を守らねばならなかった。
明日飢えるかもしれない苛酷な日常に加え、突如訪れる不条理な死にまでおびえなくてはならないとは。
はたして神の加護は人の上にあるのかと、天に向かい声の限りに罵りたくなる。
だがその慈悲は、確かに人の上にもあった。
自分達を飲みこもうと広がる暗闇に比べればほんのかすかな、足元を照らすのみの実に頼りなげな光ではあったが、人も未来を望んでもいいのだと道を示す、希望の灯があったのだ。
魅魎の魔手より人の命を保護するべく、神によって地上に配された者。魔を退ける力をその身に備えた者。
魅魎を断つことができる、唯一の魔法の剣、魔剣を持つ者。
魔剣士。
彼らはさまざまな思いのこめられた声で、そう呼ばれていた……。