第15話「前夜の誓いと第一試合」
夕闇が校舎の裏庭を包み、本戦を控えた仲間たちが集まっていた。
ナイアが突然、芝居がかった声で両腕を広げる。
「おまえたち! 銃弾に倒れず! 蹴りにも屈せず! 政府の秘密兵器を守り抜くことを誓いますか!?」
「……はぁ!?」
「なんの話だ!?」
タイチとレントが同時に叫び、思わず立ち上がる。
「え? え? あれ? 言ってなかったっけ?」
ナイアは軽く舌を出し、てへぺろと笑う。
「……頭が痛い……」
ナナミが額を押さえると、ハイネもため息をつきながら頭を抱えた。
「……お前なぁ……このタイミングで言うなよ……」
仕方なく、ナイアが事情を説明する。
政府が極秘に開発した兵器をバイオロイドに搭載し、サイトの脅威に備えていること。
ミミミとリラリがすでに搭載済みであること。
説明を聞き終えたレントが腕を組む。
「……それなら、ガルドにもその兵器を搭載してくれ。」
「おう、そうだな! ユウロにも頼む!」
タイチもすぐさま乗ってきた。
「へいへい~、お客さん増えましたっと。」
ナイアは端末を開き、整備班に連絡を飛ばす。
全員の表情が引き締まった。
「……打倒サイト、だな。」
「おう!」
その声に、夜風が静かに応えた。
―――
そして――本戦開始。
巨大なアリーナに集まった観客が歓声を上げる中、ハイネたちは出撃ゲートに立っていた。
「第一試合、開始!」
目の前に現れたのは、近距離戦を得意とするチームだった。
複数の前衛型バイオロイドが猛然と突っ込んでくる。
「来るぞ!」
ハイネは剣を構え、リラリと息を合わせる。
リラリが素早く敵の間合いを潰し、ブレードを振るう。
ハイネはその隙を突いて敵の関節を狙い、銃撃を重ねた。
「ぐっ……こいつら、硬い……!」
「ハイネ様、後方から二機!」
「わかってる!」
背後から迫る敵を振り返りざまに撃ち抜く。
リラリが体を捻り、義手で刃を受け止めて弾き返す。
「すげぇ……!」
タイチが高台から索敵を続け、ユウロが敵の配置を叫ぶ。
「右後方、回り込んでます!」
「ナナミ! ミミミ!」
「任せなさい!」
ナナミのハンマーがうなりを上げ、ミミミが小さなシールドでナナミを守る。
その様子に敵の前衛が動揺する。
ハイネはその隙を見逃さなかった。
「リラリ、行くぞ!」
「はい、ハイネ様!」
二人は息を合わせ、一気に前へと踏み込む。
ハイネの剣が敵の脚部を斬り裂き、リラリのブレードがコアを貫いた。
「やった!」
観客席からどよめきが広がる。
第一試合、ハイネたちのチームは着実に優位を取っていった――。
敵の陣形が崩れた瞬間、ナイアの声が響く。
「今だ! 一気に押し込め!」
レントとガルドが最前線を切り開く。
大剣が横薙ぎに振り抜かれ、敵のシールドごと弾き飛ばす。
ガルドの巨体が突進し、二機まとめて壁に叩きつけた。
「ガルド、やるじゃないか!」
「フン……当然だ。」
高台ではタイチが素早く位置を変え、ユウロが羽を散らすように光を放つ。
「左奥、隠れてる一機を見つけた! 座標送る!」
「了解!」
ナナミがミミミを連れて疾走し、敵の死角に潜むバイオロイドを強烈なハンマーで粉砕する。
ミミミはその間、盾を広げてナナミを守り切った。
「さすがだね、ナナミ!」
「ミミミのおかげよ!」
「……ナナミさんこそ……!」
前線では、ハイネとリラリが息を合わせて戦っていた。
「右の奴、こっちで受ける!」
「左は任せてください!」
リラリのブレードが火花を散らし、敵の関節を切り裂く。
ハイネは銃を連射し、動きを止めた敵のコアへと剣を突き立てた。
「やった……! リラリ、後ろ!」
「はいっ!」
振り返りざま、リラリは義手を盾に変形させ、飛びかかってきた敵の斬撃を受け止める。
その衝撃で土煙が立ち上がるが、リラリは踏ん張った。
「……ハイネ様を、守る……!」
「リラリ……!」
ハイネはその隙に敵の脚を切り払う。
連携が決まり、敵が瓦礫に倒れ込んだ。
残りの敵が一斉に退くのを見て、ナイアが笑みを浮かべる。
「これで決まりだな。勝利、いただき!」
アリーナに響き渡る歓声。
第一試合の勝利が告げられた。
ハイネは肩で息をしながらリラリに笑いかける。
「……やったな。」
「はい……ハイネ様のおかげです。」
レントが大剣を担ぎ、ナナミがミミミの頭を撫でる。
タイチはユウロを肩に乗せて笑った。
「チームって、いいもんだな!」
「そうだな……」
だがその瞬間、観客席の最上段で、ひときわ冷たい視線が彼らを見下ろしていた。
――サイトと、その隣に立つバイト。
「へぇ……ちょっとはやるじゃないか。もっと面白くしてくれよ?」
サイトが呟き、口元を吊り上げる。
その笑顔は、嵐の前触れのように不気味だった。
勝利の余韻に浸るハイネたち。
その未来に、次なる激戦の影がゆっくりと忍び寄っていた。