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3 整わぬ旅支度

 先輩に会いたい。


 先に異世界転移したモリクボ先輩に会いたい。


 もう一度会って気持ちを伝えたい。


 転移召喚時に彼女は男になったらしいが、ボクが女の子になっているので何も問題なし。


 元々凛々しくて背が高く、男子だった頃のボクよりも、むしろ男らしかったモリクボ先輩。


 会いたい。死ぬ前にもう一度。


 ※以下、モリクボ先輩への愛の言葉で一万二〇〇〇文字も費やされているので割愛する。




 ――ボクの命が尽きるまであと五ヶ月と二十日


 そう、あれからもう十日が過ぎていた。


 ボクは、一刻も早く、先にこの世界に転移してきているモリクボ先輩にに会いたいと希望したが、聖女のアリシアさんや、大司教さまは、まずは余命半年をなんとかしようと色々と考えてくれている。


 その一つとして、西の果にあったという古代魔法王国ゴンドーラの遺跡へ探索に行くことになった。ボクの意思とは無関係に……。


 ギルドにて「ゴンドーラ」へ探索の冒険に出るためのパーティ参加依頼をしてみた。


 だが冒険への旅に相応しい冒険者は皆無だった。

 いや、誰も名乗りをあげなかったわけではない。


 この十日間もの間に二十人は参加表明をしてきた。


 しかし、どいつもこいつも聖女アリシアさんと旅がしたくて、名乗りを上げてきた助平冒険者ばかりだった。


「アリシアちゅわぁぁぁん」

「俺、この旅が上手くいったらアリシアにプロポーズするんだ」

「別のパーティに所属していたけど、アリシアちゃんとパーティを組めるなら、なんの躊躇いもなく抜けられる」


 と、こんな調子だ。冒険者ってこんなのばかりなの?




 さらに面倒な事に、このボクがAランクパーティのリーダーに気に入られてしまったらしく、激しくアプローチをしてくる。


「ねえ、シノミヤちゃん、俺たちのパーティに入らない?」

「えっ、ボ、ボクは、ちょっと……」

「君のように小さくて可愛らしい魔法使いは珍しい。ぜひうちで活躍してほしい。はぁはぁ。」

「ええっ……(困惑)なんだか顔が怖いんですけど……」


 長い金髪をなびかせて、ウィンクをしながら執拗に勧誘をしてくる。しかしどうして息が荒いのだろう。


 残念ながら、ボクは元男子(高校生)なので、イケメンに決めポーズで誘惑されても何も感じないし、そもそもこの手のタイプが苦手だ。




「ねぇ、アリシアさん。ボクちょっと思ったんですが⋯⋯」


 ボクやアリシアさんに色目を使ってくる多くの助平冒険者を見て、ある考えが浮かんだ。


「どうしたんです?」


「もしかして遺跡探索って、何もボクらが行かなくても、ギルドでクエスト依頼に出して、他のパーティに行ってもらえばいいんじゃないかな」


「うーん、どうでしょう⋯⋯考古学者も同行して貰えれば、それも可能かもしれないですが⋯⋯」


 なにを悩む必要があるのだろう。

 どうしてもボクとアリシアさんが行かなければいけない理由でもあるのか。


 確かに他人事ではない、ボクの命に関わることだけど。


「まず、他の冒険者たちと考古学者に、下調べをしてもらうというのはどうでしょう。で、ボクとアリシアさんはその間に一回帝国に向かってモリクボ先輩と会う」


「そうですねぇ、そんなに勇者モリクボに会いたいんですか?」

「あっはい! もうすぐにでも!!」


 ボクは元気よく、即答した。


「会って、がっかりしなければいよいのだけれど……」

「は?」


 アリシアさん、あなたが何をいっているのか分からない……。



          ―― つづく

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