第7節 星の民
サーラの歌声は 傷口の空間を撫でるように すべる
優しく優しく
澄んだ声で
黄金の竪琴は 柔らかく柔らかく
歌声にそう
そして傷口を縫いきって
縫った傷すら消して行く
ほろ……
最後のアルペジオが終わった時
皆の心を何かが満たした
「神子様お見事」
でもね……カーム
「なんだか悲しい……」
サーラが俯く
「それは星が泣いているからです……人は悪事に手を染め 星を侵し 傷つけてきました」
カームが リリーを撫でた
「やってはならない事を沢山」
「戦 自然を冒涜した魔法実験」
そして……
「そして?」
「あってはならない!星の民狩り……そして!過去の民の独占」
「星の民?」
星渡りの方舟を 有するという選ばれた方々です
そして過去の民は……
「もう……もう……お分かりですな?」
「うん……」
「己の利の為に歌わせようとし……歌わないと殺される……しかし……誇り高い あの方々は従わなかった」
「そう……そうね」
「ルーテル……」
「うん……もう過去の民はサーラ残すのみかもしれない」
「星の命はもう尽きています」
「そんな……」
「星癒しの過去世を歌える方が 神子様で尽きる……そうなれば星は終わります」
サーラも 座った
「王族は己の身しか考えず 大神殿に財力を注いで来ました……しかし我々は……星渡りの方舟に民草を乗せて逃がしたい……おわかりですね」
カームの覚悟は本物だった
「自分は例え滅んでも……」
「カーム」
星の民にお会いください
あの方々は 地下におられます
「神子様……」
ルキオが手を取る
「お手伝いさせて下さいませね」
お城の騎士様の中に 味方が いらっしゃいます
ラウル様といいます
「きっとお守りくださると……」
「ラウル様……」
サーラはふと不安になった
「大丈夫です クレオのような輩ではありません」
カームが 太ももをぱちり……と 叩く
「私も老い先短い身……神官も神官兵も民草も守りたい」
ご同行は 出来ません
「でもカーム大神官 サーラがいなくなったら」
「はい……そうですな……滅ぶ覚悟です」
「いや!」
「サーラ」
ルーテルが サーラの肩を抱いた
「どうか星の民を お連れください お城には2ヶ月待ちに入ってもらいましょう?」
「待ち?」
そうです
お加減が悪いと……
だめですかな?
「いい!いいけど!無理しないでね!」
「神子様」
リリーが サーラの手を舐めている
それがあたたかい
「分かっております」
「そうしないと追っかけまわすから!」
「こわやこわやです……」
カームがわらった
さあ……町へ戻りましょう!
傷が ここまで来ているなら 町も危うい
「はい……」
サーラが 立ち上がる
「ルーテル!ルキオ!リリー」
「ん……」
「はい……」
「きゃん!」
一緒に星の民に会ってくれるわよね
「もちろん!」
みんなは頷いた
さあ……
一行はそっと……立ち去る
あとは 優しく花が揺れるだけ
サーラは 過去世の歌を 歌いつつ泣いた
なんて可哀想な星
少しでも巻き戻して……ね
そう……そう……願った