「腹が減った…―――めし…」
倒れ込む音と重みと。
情けない声に反射的に起きて頭を抱えた。
寝台に。
絶対いるはずのない相手がいた。半身を起したかれの腹の上に、うつ伏せに倒れ込んでいる。
「あんたはどうして、またこんな部下の処に来てめしなんかねだってるんだ!上級士官向けの食堂いけばいいだろうが!」
寝起きの良さは天下一品だが、起きる前にこれを察知して何故逃げ出せないのかと己を呪いながらいうと。
腹のあたりから―――考えたくもないが、対象は自分の腹あたりに突っ伏して動かない―――世にも情けない力の抜けた声が聞こえてきた。
もはや、音声として耳に届くのが奇跡なくらいだ。
短く切られた赤みのある髪が、微かに動いたかもしれなかった。
――多分、これは首を振ったんだな…。
わかるようになった己が、とてもいやになった瞬間だった。
掠れて聞き取りにくい声が何か呟いている。
「…――――食堂のめしは、…まずい、…――――」
聞き取る努力をした己が馬鹿だとおもった。
「あんたは!…――――!将校が食う飯がおれたちよりまずいわけないだろう!わかっていってんのか、このばか!大体何度いったら、…!」
「……――――もう、だめだ、めし……――――」
「っ、…。このやろう、…ウィル!…食事を頼む」
へたれている上級将校―――何故、わざわざ下士官の宿舎にまで来て、しかもひとの腹の上に乗って飯を要求してるばか、に飯を用意してやらなくてはならないのか。
怒りに燃えていても、結論は何処にも無い。
いや、立派な結論は厳然としてあるのだが。
―――畜生、これで、このばかが、あれでさえなければ。
一度や二度しばきたおして馬小屋にでも放り込んでおくのだが。
――いや、駄目だ。いまの時期馬は貴重だ。…こいつは食えるもんなら、いつ生きた馬にでも手を出しておかしくない。
冷静にこれまで観察した事実と。観察してしまっている事実に額を押さえて肩を落として。ふと、気づいた。
「何してるんだ?」
うつろな瞳が、かれの腕をぼんやり見つめている。
よく考えればかれの上半身は裸で。別にそれは珍しいことではないが。傷痕の多いかれの身体を、というより腕を、ぼんやりとした瞳で熱心に上官が眺めている。
痩せた頬にいつもは鋭い眸が、ぼんやりと青灰色で熱心にかれの二の腕
を眺めている。それだけのことだが。
「ちょっと待て、…」
「…―――なにをだ?」
既に相手に対して上官に対する言葉使いをすることなどとっくの昔に敬意や何かと一緒に纏めて窓から放り投げて捨てたかれだが。
思わず、あまりの危機感に敬語がするりと喉を出ていた。
身についた習慣というべきか。
本来、上官相手には敬語は当然の作法だが。
金褐色の眸に、剣呑な色が乗る。
「…お待ちになってください」
焦る心持がかれの口から思わず敬語を滑り落としていた。
虚ろな上官の瞳は綺麗な常には淡い灰青色だが、いまは青味が勝っている。
痩せた頬に鋭さを秘めた容貌は、貴婦人方に随分受けがいいらしい。
いつも皮肉をきかせているような笑みを乗せる唇と、浅い煌めきと揶揄を投げかける眸が、いまはぼんやりとみつめている。
ある意味、熱を込めてだろうか。
まるで、口説く相手を熱心にみつめるように。
「…だから、ちょっとまて」
上官が女たらしだろうと、貴婦人方に騒がれる容貌をしていようとかれに関係は無い。
二の腕を熱心に見られているかれにしてみれば。
問題はそこには無かった。
かれの額から無造作に切った金褐色の髪が落ちる。彫りの深い容貌は美形というには野性味が勝つ。そのいつもなら女にもてる野性味のある常に落ち着いて動揺をみせない額に汗が落ちていた。
「…あんたは、…―――――何してるんですか、あんたはっ!」
「…え?」
大声で呼ばれてようやく視線だけをかすかに上官がかれへと向けた。
いや、ようやく視線が外れた、というべきか。
「…いま、ひとの腕に何しようとしてました?あんた」
凄みを込めていうが、相手に動揺の気配は何処にもない。
ぼんやり、青の勝る視線を腕に落とす。
「いや、…うまそうだとおもってな、…」
肉だよな、と呟く。
確かに、鍛えたかれの腕はかなりどうなのかはしらないが。
上官が、本気で食べようかと考えているのだけは伝わって真剣にかれは叫んでいた。
「食人はやめてくれ!…ウィル!まだか、…!」
めし、葡萄酒!と叫んでいるかれの上にぐったりと横になって、つぶやく声がする。
「…めし、――――…」
力の抜けた、抜け切った声に危機感を覚えて叫ぶ。
「メシ!…まだかっ、――――!」
切実なかれの要求が、下士官宿舎に響く。
かくして。
「…だから、何であんたは、こっちまでわざわざ這ってくるんだ。辿り着くなら、あちらの宿舎にすればいいだろうが?…わかってるか?聞いるのか?」
ワインの入った盃を腹の上でへたれている相手のくちに傾けてやり、それをこくこくと呑んで。無言で、差し出されたパンを美味しそうに食べて。
「もーすこし、くれ」
「一回、戦場に捨ててきていいか」
怒りに拳を震わせる相手にも、この上官は震えもしない。それどころか。
「もっと」
「…――――いいか、あんたの分の補給は、あっちの上品な宿舎の食堂に届いてるはずだ。それをどうしてわざわざだから」
黒パンをちぎって食わせながら。ふと、その仕草がなれて感じて。
「…――――」
思わず額を押さえているかれに。まだぼんやりした灰青色の瞳がかれを仰いでいった。
「にくは?」
「…――――わかったから、次からはもう来ないでくれ」
「煮物もほしい」
「聞いてるか、あんた?」
いいながら、既に匙で臓物の煮込み―――上級士官の癖にこの上官の大好物だ――をすくって食わせる体勢に入っている己に自己嫌悪がつのる。
「…一体何だって」
「うまいな、…パンもくれ」
「…わかったから、ちょっと待て」
いまちぎってるんだ、といいかけて。
―――いや、おかしい、絶対におかしい、何でこんなのの世話をこのおれがみてるんだ!
黒パンをちぎりつつ、くちもとまで食べやすいように近づけてやっている己に気がついて額をおさえる。
―――おれは一体、…。
「水くれ」
「自分で飲め!もう起き上がれるだろうが、…!」
「…―――ん、面倒だ、…」
「一度殺すぞ?」
「…俺が死んだら、誰が部隊の世話みるんだ」
「――――――…おい、水!ウィル!」
「水がなければ、葡萄酒でもいいぞ」
「―――――あんたが全部ざるのようにのむから、うちの部隊の分の配給が底をつきそうなんだ。あんたにやる葡萄酒はもうない!」
「…なら、配給を増やすように手配してもいいんだが、…」
掠れた声でぼんやりと呟いた上官の一言を待っていたように扉が開いた。
「あ、おまたせしました!葡萄酒ですね。水もありますよ。どうぞどうぞ。で、いつから配給ふやしてもらえます?」
いつのまにかといいたいくらい素早くベッドの脇に立ち、水の入った器と最近はかれの要求にも滅多に出さなくなった葡萄酒の器を奉げてみせる会計担当に疑念の視線を送る。
「ウィル、おまえ、扉の前で待ってたのか?」
「いいえ、ちゃんといま、配膳所からとんできたんです」
白々しくいう会計兼給仕担当二等兵ウィリアムがにこりと笑う。おとなしげな外見の青年だが、会計の紐はきっちり握って離さないことで有名だった。
「おい、…?」
隊長であるはずのかれをおいて、部下と上級将校である上官が何か密約を交わしている。
「ああ、今度の会議で協議に掛けるから、会計で落とせるだろう、―――余剰予算も使えるしな。次の次の週末からは増やせるぞ?どのくらいほしいんだ?」
「そうですね、肉は勿論として、小麦粉ととうもろこし粉の配給をあと二袋。酒はそうですね、蜜酒を二壺に、葡萄酒を半ガロンも増やしていただければ」
「葡萄酒は難しいな、…そんなに足りないのか?」
「別に、僕は困らないんですけどね」
「…だが純粋に支給で増やすのは難しいな。兌換紙幣を出すから、そいつを横流し出来ないか?」
しかも、何か不穏なことを相談しているのは気のせいか。
「いいですね。…でも、実際次に戦場に行く前に出していただかないと。兌換紙幣に価値があるのなんて、本国にいるうちですからねえ」
「それはそうだな――――出来るだけ早く出せるように手配しよう」
わかりました、とウィリアムがベッドの傍らに葡萄酒と水の壺を置いた。
「おい、…?」
「それでは、ごゆっくり」
「ああ、ウィリアム。いつも飯が旨いな、此処は」
「いいえ、どういたしまして」
にっこり、挨拶をして去って行くウィリアム――部下の二等兵に。
「おい、…?一体、いま」
何を勝手に決めてたんだ?おまえら?と。
疑問を完全にくちにするまえに。
「水くれ」
当然のように要求する態度の上官に。
視線を振り向けてかれが拳を握る。
「あんた、もう自分で食えるだろう!ひとの上にいつまでも乗ってないで、起きて食え!」
「…つまらんな」
「…つ、」
貴様、と。つまっているかれに構わず、優雅に伸びをして起き上がる。
ひょい、とかるくかれの腹から降りるあたりに殺意を憶える。
「うまそうだ。…ほう、酒の肴もある。」
おまえ、いい部下を持ったな、と。
薄く笑って上官がいう。
戦場に捨ててきたい。
――――…どうして、このばかを捨ててきちゃいけない…?
つい真剣に考えてしまう。
額を押さえて、がっくりと肩を落としているかれのベッドに腰掛けたまま。
痩せた頬に皮肉な笑みを浮かべて上官が機嫌良く飯を食っている。
「…――――何だって、」
いつから、こんな夢も希望も無いことになった?
遥か昔、確かまだ軍隊生活に夢をみていた時代があったはずだが。
…遠いな。
思い出せないくらい遠くだ、それは。
いや、もともと軍生活に夢も希望もあるものではないが。
それでも。
ないなりの希望というものが、あったはずだ。
「それを、…」
全部根こそぎ、――――。
根こそぎ夢も希望も潰えさせてくれた上官は、かれが背を向けた横でいかにも旨そうに飯を食っている。
いまは、確か真夜中だな。
ようやく、時刻に思いあたる。
――たく、何だってこんな夜中にひとの部屋に忍び込んできて、しかもめしを要求する上官なんぞ。
持つはめになったのか。
そして。
いかに、すてたくても、すてられないのか。
次の戦場で、絶対捨ててきてやる。
決意はしたが実行出来ていない、既に何度目かになる決意を固めているが。
あのときの自分に縄をつけて引き戻してやりたい。
―――あれは、ボルヴィッツの戦が小休止してたときだ。
召還の指令が来てよろこんだ過去の己にいってやりたい。
絶対戻るな!そいつは罠だ、駆け足でもどれ!
いっても詮無い過去だが。
当時は、部隊はまだ余力を残していたとはいえ、替りの部隊を寄越して交代を命じる召還の報せを運んできた伝令がうれしくおもえたものだ。
こういう地獄への召還とは知らなかったがな…。
部隊を丸ごとやすませてやれる指令が本当に有難かったものだ。
戦場を指揮する形ばかりの指揮官に引継ぎを済ませ、やってきた替りの部隊に細かな話を通す。そう、やってきた部隊の連中に、よろしく頼むといって、うらやましがられて戦場を離れたときには、本当に運が良いと感じていたのだ。部隊を休ませたいと本国に伝令を頼む部隊長はいくらもいるが。実際にそれが適うのは滅多にないことなのだ。
女に会いにいく兵士もいれば、単純に弾の飛んで来ない場所での眠りを楽しみにする兵士もいる。まあ、大概は本場にいる――戦場ではふれられない女達との再会を愉しみにするものたちだが。
しかし。
本国に到着の報告に訪れたかれは。
今回の召還が。
運の良さなどまったくかかわりのないものだと。
むしろ悪運に属する領域にかれを引き摺り込むことになるのだと。
そう、本当に久し振りに着たくもない本国での正装した軍服などに身を包んで。呼び出された本部に出向いてみれば。
「…―――――」
これがいたのだ。
これが。
「うまいな、葡萄酒。おまえも飲むか?」
「飲む」
いうと、残念そうにいう。
「本当に飲むのか」
「本当に飲みます。勧めておいて何いってるんだ。あんたひとりにあけさせてたまるか」
「…少しにしろよ」
「だから、これは何処の酒だ?」
「おまえの部隊に支給されてる葡萄酒、違うか?」
「違わない。―――寄越せ」
壺を渡そうとしない上官を睨む。
一度思い切り絞め殺したいが。
だがそれだけはできない相談だった。
少なくとも、我が祖国――一応飯の種ではあるこの小国の軍隊に所属している限りは。
――殺せないな。…
「おい、なくすなよ」
「しるか」
渡すんじゃなかったな、と。横を向いて小さく上官が呟いている。
殺したいが、殺せない。
顔だけは端正な上官が、よく食った、と伸びをしているのに殺意をおぼえる。
「あんたな、…」
満足そうに伸びをして、つぎにふわあ、とあくびまでしてのける上官に。
本国に召還されて。
司令部に顔を出したら。
こいつが、いたのだ。
思わず当時のことを思い返して思い切り眉を寄せていると。
「どうした?もういらないな?」
「…おいっ、―――――なんで、もう空なんだ!」
無意識に注ごうと持った葡萄酒の壺はもう空で。
臓物の煮込みも、黒パンも。
かけらひとつ残さずに、実にきれいに食べられている。
いっそ見事なくらいだ。
「――――あんた、いつのまにっ!」
「いや、うまかった」
と笑顔になる上官に。
「あんたはっ、…食ったんなら出ていけ!」
せめて、己の寝室で質の良い睡眠の為にゆったりと眠る為のスペースは確保したい、と。
あげた叫びは、すでに遅かった。
「ああ、明日の朝は起さなくていいぞ」
あっさりいうと。上官はすでに眠りに入っていた。いつもながら、感心する素早さだ。
「…感心してる場合じゃない」
もともと、かれにも充分とはいえないぎりぎりの大きさを。
あっさり上官が眠って占拠している。
「…―――――」
純粋な殺意が沸いてきてつい笑みを浮かべてしまったが。
「あのな?」
だから、と呟く。
「ひとのベッドに、寝るな!」
怒鳴ってもむなしいのはわかっている。いくども試した。絶対に起きなかった。
―――一体、何だってこんなことに。
すべてはあのとき。
召還された本国で。
本国の軍司令部で。
普段は会わない御歴々が顔を連ねる会議の隅に席を連ねさせられて。
それから。
会議が終了したあと、呼び出された小部屋から。
いや、そんな会議に呼び出された時点で悟って逃げだしてしかるべきだったが。戦場では野性の勘も、平和な本国では鈍るのかもしれない。
――なんで、逃げ出さなかったんだ。
あのときのおれは、と。
後から悔やむからこその後悔というものだが。
呼び出された小部屋――といっても、随分立派な執務室ではあったが――に。
こいつがいた。
幕僚として名の知れた、軍生活の中でも世話になった将軍が座る執務机の隣りに。
静かに立って。
よお、と皮肉な笑顔をかれに向けてきた。
上級将校の制服を着た相手に疑問を持ったかれを察したように。
将軍が自ら口を開いた。
案内してきた知り合いの秘書官ではなく。
このとき、既に嫌な予感が芽生えていたが。
「紹介しよう」
将軍が立ち上がり、入り口の扉前に立つかれにその将校を指し示した。
――なんで、階級章もつけてない将校の紹介を将軍が?
つけていない、のではなくある意味つけられないのだとは。まだ、かれのしらないことだが。
微かに感じていたいやな予感があれほど当たるとは。
にこやかな笑顔を、陰で狸爺いとも呼ばれている将軍は向けてきた。
「こちらは、君も聞いたことがあると思う」
そして聞いた名は、けして忘れられない―――だが、可能なら、聞いたという記憶を消し去りたいものとなった。
将軍は。
こともあろうに、その名を告げた。
永遠に、忘れたい記憶だ。
忘れれば、絞め殺せるんだが―――――。
剣呑な視線を送るかれのもとで。
呑気に、平和な眠りのなかに。
「うん、ごちそうさま…」
かれの寝台を占拠している寝姿に、呟く。
「一度絞める…」
低い声の殺意にも、まったく反応は無い。
腹の底から煮え繰り返るが。
やはり。
戦場に戻る身としては。
――――…。
将軍が告げた名は。
―――あれが不運の始まりだ。
その名は。
確かに、誰も知らないものはない。
軍人なら敵味方を問わず。
いや、軍籍にないものでも。
こともあろうに、この上官が。
つまり、この上官が。
その名の持ち主であるのだと、将軍は告げていたのだ。
「彼は――――――」
名参謀ロクフォール。
戦場に奇跡を起こすといわれ。
必ず勝利を味方に与えるといわれ、事実これまでの戦場で数々の武勲を飾りかれらに勝利を与えてきた。
天より勝利をもたらす、幸運の使い。
「…なんで、それがにゃんこなんだ、…!」
にゃんこ、つまり。
猫なのだ、名参謀は。
いや、ねこというには大型かもしれない。
いまかれの寝台を占拠して寝ているのは赤毛の綺麗な痩せて風貌の鋭いねこ。
いまは鋭い青灰色の眸は満足げに閉じられて、美味しいごはんを反芻しているのか、ひげをすこし動かしながら実にリラックスしてのびている。
大型の猫にしかみえないロクフォール。
本部に呼ばれて。
将軍直々に指名されたのは。
名参謀ロクフォール――にゃんこの、お世話係。
「なんだって、こんなことに、…―――!!!」
後悔先に立たず。
ねこをついにゃんこ、と呼んでしまうくらいには猫好きなことが軍にばれて。
猫族である名参謀ロクフォールの世話を任されてしまうとは。
宿の女達に猫好きがばれて、それが上層部にも伝わってしまっていたこととか。
夕食についた肉を、つい路地にいた痩せた猫が気になってわざわざもっていってしまったことがあったりしたこととか。
そんなこんなが、まさかバレて上層部からこんな指名を受けるだなんて誰が思うことだろうか?
「なんでこうなった、―――!!!」
かれの叫びをきいても、まったく動きすらせずにまったりくつろいで寝ている赤毛の猫。
名参謀ロクフォールとその世話係として選択されてしまった女好きの下士官。
「どうして、せめて、メス猫じゃないんだー!!!」
名参謀ロクフォールは、雄猫だ。
女好きの下士官にとって、これ以上の悲劇はないが。
「ふわああ、――――」
「あくびするな!出て行けって!くそっ!」
世話係の下士官の不幸にまったく構わず。
赤毛の大型猫である名参謀ロクフォールは、優雅にのびをして、まったり寝台にくつろぐのであった。
下士官が宿の良い女を寝台に連れ込むことはしばらくできそうにない。