目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第3話

新しいクラスに馴染むのには時間はかからなかった。

虎二と狼もいたこともあるが、このクラス全体が皆仲がよく雰囲気が良いからだ。

夏服が始まる頃、仲の良い女子の一人、ミツキが弁当を持ってやって来た。

『お昼食べよ?』

『うん。』

傍にいた女子たちも、『混ぜてー。』と机を寄せると数人でのランチになった。

サンドイッチを頬張るミヤコがユエに視線を向ける。

『ねえ、ユエちゃん、ずっと聞きたかったんだけど。』

『なに?』

『中山君と間山君、どっちが彼氏なの?』

『え?』

ユエが箸を止めるとその場にいた女子たちが振り子のように頷いてユエを見た。

『あたしも気になってた。』『あたしも。』

口々にそう言われてユエは苦笑すると弁当箱の卵焼きを口に運ぶ。

どっちが彼氏って。虎二と狼は仲の良い幼馴染で彼氏彼女の関係じゃない。

多分それを言っても彼女たちの興味は尽きないだろう。

『で、どっち?』

『ああ、あのね。同じ中学校だっただけなんだよ。』

彼女たちにはやっぱり違う答えが必要だったようだ。

『えー、内緒なの?』『結構気になってる子多いんだよ?』

『そうそう。あの二人めっちゃモテルって知ってる?』

ミツキが笑って言うとユエは口の中の物をごくりと飲み込んだ。

『そうなんだ。』

『うん、だって格好良いし、二人とも優しいからね。ユエちゃんがいるから皆、様子見てるけど、彼氏じゃないってわかったら激しくなりそうだよね。』

ミヤコが笑う。他の女子たちもうんうんと頷き、虎二と狼の噂話をし始めた。

ユエはそれを聞きながら弁当を食べていたが、噂の中の二人はどこか王子様のように見られているようで、記憶の中にある中学生の二人を思い出すとなんだか不思議な感じがした。

ランチが終了してユエの周りが静かになると教室のドア近くにいた男子がこちらを向いた。

如月きさらぎさん、ちょっと。』

手招きされてドアの傍に駆け寄る。

『どうしたの?』

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?