地下街の床に黒い小さなフィギュアが落ちている。
私は、それを見つけたのか、それともそれに見つけられたのかわからない。
誰にも気づかれずにただ転がっているだけなのかと思いきや、道行く人たちはそれを踏んづけたり、気にして見てみたりしている。
ただ、それを拾おうとする人は私を含めていない。
ゴミというには存在感のあるそれは、蹴飛ばされてあちらを向いてしまった。
元の居場所は誰かの鞄の隅にでもあったことだろう。
しかしいまや邪魔者扱いを受けている。
捨てられるのだろうか、それともどこかにしまわれるのだろうか。
私は悲しくなって、そこを離れる。
拾うこともしないでそこを離れる。