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第2話 突然の吉報?!

裏路地のゴミ箱の近くに座り続けて何時間経っただろう。


いつの間にか働いていたコンビニでは、売上金が減っていることを犯人扱いされて本当は違うのに追い詰められて解雇された。


 警察に届ける代わりにすぐに辞めてくれと言われた。運が悪かった。


監視カメラの死角にいたことでアリバイ作ったとかなんとか、言い訳するのも

面倒になった。



ただ、単に、店長が俺を追い出したかったきっかけを作っただけのようだ。



区役所で手続きになったら流れで生活保護を受けることになったが、なぜか住む場所は提供されずに代わりに支給されたのは、手首の皮膚の中に埋め込まれた

黒いマイクロチップ。注射器でプチッと打たれた。一瞬だった。注射器で刺されたところは少しわさわさの毛が剃られていた。ボタンを押す時に邪魔になるからだろう。


でも、これはとても便利。


GPSで居場所把握されていて、銀行口座とも連携する。キャッスレス決済の把握もされる。お金を払わずとも電話とメール、ラインもできる。


無料というものには裏があって、その代償は辛い。

個人情報がダダ漏れということだ。


もう、生きていくには身を売ってまでしないといけないんだと通常に生きることを諦めた。



キラキラと光るネオンと雑音が響くお店に惹かれて、入っていこうとするが、

気持ちを切り替えて首を振る。一瞬立ち上がったが、地面にまたぺたんとお尻をつけた。


やる気を失った。

せっかく手に入れたお金が全て無くなるだろうと察した。

頭の上にある耳がかゆくなる。


すると電話の着信音が鳴る。


このマイクロチップ版の電話には初めて出る。

スマホと同じ電話番号で登録していたため、いつも通りに使えた。


アシェルは、左手首の皮膚にある小さなボタンを押す。


ブォンと音がなると透明なディスプレイが表示した。

縦10cm横15cmの画面が手首の上に現れた。

縁には水色が線が浮き出ていて、おしゃれだった。


「はい」


『お忙しいところ、申し訳ございません。こちら、株式会社スタジオHITヒット のオーウェンと申します。 アシェル様でいらっしゃいますか?』


 初めて出るアシェルはその機械のヴィジュアルに感動して、息をのんだ。


 電話の声はもちろん、話した言葉が自動的に文字変換されている。

 表示フォントは明朝体だった。まるで小さなパソコンの画面があるようだった。


『もしもし?』


「あ、すいません。そうです。アシェルです」


『よかった。繋がりましたね。先日は舞台【赤ずきん】の狼役の応募ありがとうございます。メールにて、エントリーシートを拝見させていただき、社内審査をさせて頂きましたところ、書類審査通過致しましたので、そのご連絡でした。つきましては、オーディションの日程をお伝えしたいのですが、よろしいでしょうか?』


「え、あー。そうなんですね。ありがとうございます。大丈夫です」


『そうですか。それではこれから場所と日程と日時をお知らせします。スクリーンショットをして保存することをお忘れなくお願いします』


「え、あ、これで保存するのやったことないですが……」


『もしかして、マイクロチップの方ですか? 今流行ってますもんね。それでしたら、皮膚にある黒いボタンを2回押していただけると表示されてる画面が保存されますよ』


「あーーー、これですね。ありがとうございます」


『すごい、流行り物には目がないんですね。私もまだ持ってないものですが、

 知人が使ってるのを見たことがありました』


「そうですかね。そんなことはないんですけど……」


(まさか、生活保護を受けて強制的にこれを使ってるなんて言えない)


『話がそれましたが、日程のご連絡しますね。9月14日の午前10時から東駅のそばにあるAスタジオにお願いします。準備するものは、とりあえず、リクルートスーツを着ていただければあとこちらで衣装を着替えて頂きます。何かご質問はありますか?』


 アシェルは表示された文字をスクリーンショットしてメモしておいた。


「はい。質問は大丈夫です。当日、よろしくお願いします」


『質問はないということなので、お気をつけてお越しください。この電話はオーウェンが担当致しました』


「あ、ありがとうございました」


 アシェルは電話を切った。電話を切るボタンは画面のバツ印をタップするのだとすぐにわかった。


 アプリゲームするときに映るC Mを待っている間に早くバツ印は表示しないかとよく思っていたが、この画面はわかりやすく表示していた。


「オーディション受けられる! す、スーツって無い。早く買わないと。よかった。パチンコ行ってたら、スーツ買うお金も無くなるところだった。俺ってツイてる」


ガッツポーズを出して、アシェルは街に繰り出した。

このボロボロした服から着替えられることが今は嬉しすぎた。

何か目的がないと物を買うという気力が湧かない。

今は、オーディションという目指すものがある。

やる気が湧いてきた。


スーツを買うだけじゃなく、美容院に行って全体的に整えてこようかなとお店のマネキンが飾られたガラスに映った自分を見て、考えた。


誰かに見られる意識で身だしなみにようやく火をつけた。

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