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第一章 『義眼の魔女 編』

プロローグ

 人は杖を手にした瞬間、どんな表情をするか知っていますか?


 それは希望に満ちた表情。それはこれから歩む人生に胸膨らませる表情。


 そんな表情を見たくてこの仕事を続けている。


 私は、魔法使いの杖を作ることを生業としている。杖は魔法使いにとって重要な存在であり、杖がなければ魔法使いは魔法を使うことができない。魔法使いにとって杖は命と同等の存在なのだ。


 杖には魔法使いの数だけその特色がある。


 それは指揮棒のように短く手に馴染む杖であったり、それは保有者の身長と同等もしくはそれ以上の大きさの杖であったり、それは本の形を模した杖であったり。


 なかには宝石やクリスタルなどの装飾品を散りばめてあるものもある。


 魔法使いがどのような魔法を得意とし、どのような形で魔法を行使するのかを細かくヒアリングし、魔法使いにあった杖を作る。


 魔法使いそれぞれにあった杖を見極め、制作、メンテナンスを生業とする彼らは”マイスター”と呼ばれ、魔法使いの能力を最大限に引き出し、王やその側近の杖を作ることができるマイスターのことを”マスター”と呼ばれる。


 これはマスターを目指す、一人のマイスターの話である。

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