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第4話 ゲーム開始



  「え、レン! どうする? 作戦は?」

 サキはゲームが始まって焦っていた。こういうゲームは初めてだから無理もない。


 「まず地図を見よう。地図マップオープン!」

 ピッ! という音がして地図が目の前の空間へ現れた。地図には赤い点と黄色い点が映し出されていた。

 これは赤チームと黄チームの居場所だ。……ということは、俺達の居場所も知られているということか。


 「地図、見たけど。参加人数が多いね」

 サキが不安そうに俺へ話しかけてきた。

 確かに参加人数が多い。知らされてなかったけれど、地図上で赤と黄チーム合わせて最低でも50以上の点がみえる。

 50人以上の参加者がいるようだ。


 「だな。まずは高い所へ登ってみようか?」

 「うん!」

 俺とサキは見下ろせるような高い建物へ向かった。


 「これがVRMMO(仮想現実大規模多人数同時参加型オンラインゲーム)なのね。不思議……」

 サキは自分の手足を眺めた。ネコの獣人なので、しっぽや頭についている耳を触っていた。

 「ちゃんと触っている感触がある」


 サキのネコのしっぽや耳を触ってみたいと思った。でも遠慮した。サキにだって好きな人がいるだろう。

 幼馴染とはいえ、気軽に触れない。もうそろそろ美咲にだって彼氏ができる。できたら幼馴染は卒業だ。

 そんなことを考えながら、【大江戸】の町を歩いていた。


 【大江戸】の町は平屋が多いが、所々に高い建物がある。

 やがてここは新しい街として、観光地や商業施設、高級住宅が作られるだろう。


 「この建物の中へ、入ってみようか?」

 上から街を見下ろせそうな建物があったので入ってみる。

 「展望台かなぁ?」


 サキと中へ入ってみると、ゲームとは思えないほど細かく作り込んであった。


 木製の階段を登っていく。

 「手すりを掴む感覚がリアル……」

 ゲームだけど、手触りまで再現されている。すごい。


 「今回は無敵バージョンだから、階段から転げ落ちても痛みはないはずだよね?」

 サキは俺の前にいて階段を登っていた。振り向いてそんなことを話しかけてきた。

 「そうだけど、わざとそんなことするなよ」

 「あはは! さすがにしないよ――!」

 ホントだろうか? 俺は、いつ階段から落ちても受けとめられるように、後ろで身構えていた。


 「は? なに? その手つき……」

 左右の親指を合わせてボールを持つような形を作って、いつでも受け止めるようにしていた。

 「え? あっ!? 誤解だ!」

 なんか誤解されそうな手の形だった。サッと腕を下ろした。


 「まあいいけど……」

 サキは急いで階段を上がっていった。


 ビルの階段を登っていくような感じで最上階まで登った。

 眼下に広がるのは、江戸の町を参考にしたVRMMO【大江戸】の世界だ。

 「うわあ……! ひろ――い」

 サキは床より一段高い見晴台の上へ乗って、遠くまで広がる街並みを見て感激していた。


 青い空までも作られていて、本当にゲームの世界なのか疑うくらいだった。

 ゲームの中なのに風を感じた。


 「あっ、サキ。黄チームの人が近づいてくる」

 「えっ」


 見晴らしがいい最上階にきてのんびりしていたけれど、もうゲームは始まっている。

 画面に警告音が鳴っていた。


 「えっ、えっ。どうしよう……!」

 サキは初めてなので、対戦相手とエンカウントすることに慣れてない。

 「大丈夫。俺が撃つ」


 このような時のために、武器を弓にした。

 武器は使うときに自動でセットされる。便利だ。ちなみに弓矢は無限に撃てる。制限はないらしい。


 「当てられる?」

 サキが心配そうに見ている。でも俺は、ゲームは得意だ。

 「任せて」


 弓を構えて、黄チームの相手を狙う。どうやら1人で参加した人のようだ。

 悪いがこちらも手加減するほど余裕はない。

 「よし……」


 相手はどこに敵がいるのか見つけられずに、周りにいる敵を探していた。

 「残念。上だ」

 最上階から、下を歩いている黄チームの人のブローチを狙った。


 ピシュッ――――! 

 「うわっ!」

 パリン――ッ! みごと胸のブローチに弓矢を当てられた。良かった。腕は落ちてない。


『黄チーム・カイさん、脱落!』

 すぐにアナウンスされた。


 「えっ! レン、すごい!」

 サキはピョンピョン飛び跳ねていた。サキに褒められるのは嬉しい。約5階建ての高さくらいから当てられたのは良かった。

 「サキ、すぐ移動するぞ」

 俺はサキの腕を掴んで、急いで階段を降りようとした。


 「えっ、なんで?」

 サキは抵抗するわけでもなく、俺の後について来てくれていた。

 「落ちないように、気をつけて降りるぞ」


 ダダダダダダ……と階段を降りていった。

 「1人、敵を倒した。俺達の居場所はバレている。こんな逃げるところのない場所から移動しないと、挟み撃ちになる」


 「なるほど……」

 サキは感心したように言った。俺はここを出て、次に行く場所を目の前に見えている立体地図で探していた。

 敵が近づいてきている。


 「サキ、戦えるか? もうすぐ敵と会う」

 逃げる前にエンカウントしそうだ。

 「う、うん! 大丈夫!」

 階段を降りながらサキに伝えた。



 「いたぞ! 2対2だ!」

 出入り口で敵にエンカウントしてしまった。黄チームの相手は、ペア。俺達と同じなので2対2の対戦になる。

 同じくらいの歳の男子が二人。剣を持っていた。

 種族はオーガ。強そうだった。


 「サキ!」

 「1人、お願い!」


 2対2の対戦が始まった。



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