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第3話 ゲーム準備→開始



  「準備はいいか? 美咲」

 「うん」


 10日後、ネオ・日本国政府主催のVRMMO【大江戸】 バージョン・1 が開催された。


 VRMMO(仮想現実大規模多人数同時参加型オンラインゲーム)なので、自宅から参加できる。

 美咲は、俺の部屋に来て参加する。


 休日の最大6時間。ゲームの中にいることが出来る。当たり前だが食事や、トイレ休憩あり。

 ただしトイレ休憩は、敵が近くにいないことが条件。


 「じゃ、キャラ設定しよう」

 「ええ」


 人が左右上下、楽に手足を伸ばせるような細長いドーム状のVRMMO専用のブースに入って、ゲームを始める準備をする。

 どこの家にも設置してある家電機器だ。


 ゲーム開始は10時。今は9時。

 1時間余裕をもって、キャラメイクしてから始めるつもり。美咲は、何の種族にするのか気になる。

 「う――ん、迷っちゃう」

 美咲はまだ種族が決められないようだ。無理もない。


 用意されたキャラはかなり多い。細かくキャラメイクできるので、俺もかなり悩んで決めた。

 「美咲、武器は何にした――?」

 ブースから顔を出して聞いた。ヘッドセットでお互いに会話できるけれど、何となく。

 昔は大きくて重いVRMMO専用のものだったが、今は眼鏡タイプの軽量タイプだから首に負担が少ない。


 「私は接近戦が得意だから、ヌンチャクとやりにしようかな」

 美咲は意外にも、空手・柔道など格闘技が得意の女子なのだ。気を抜くと男子の俺でも倒されてしまう。

 「そうか。俺は、弓と剣にしよう」


 武器は2つ持つことが出来る。ただし、体に攻撃してもダメージがないようになっている。

 胸につけられた風船を攻撃するために、武器を使う。



 「キャラメイク終わり! そろそろ、ゲームの中へ入るダイブする?」

 「ああ」

 時間も迫っていた。細かいことはゲームの中へ入ったからだ。

 「ねえ。キャラネームは……。えっ、ちょっと! 待って!」



 俺は美咲より先へゲームの中へ入ったダイブした



 目の前がまぶしくて目を閉じた。

 『VRMMO【大江戸】 バージョン・1 へ、インダイブ完了しました』

 感情のない機械的な音声でVRMMO【大江戸】へ、無事にインダイブ完了したことを認識した。


 「うわっ!」

 そっとまぶたを開けるとそこは広大な、学校で習う江戸時代の町の風景が広がっていた。

 木でできた家。固められた土の道路。真っすぐの道の向こうには、お城が見えている。


 「すごいな……」

 キャラメイクで和風の服が多かったのは、こういうことなのかと思った。

 ゲームの中とはいえ、細かく再現されているのは凄い。昔、歴史授業で江戸時代の3D映像を見たものと同じだ。

 このままじっくりと、見ていたいところだけど……。


 「蓮太郎レン!」

 聞き覚えのある声を聞いて振り向いた。頭の上にはキャラネームの【サキ】が見えた。

 「美咲!」


 「どう? 似合うかしら?」

 美咲こと【サキ】は、猫の獣人種族になっていた。頭には猫耳、腰には猫のしっぽがついていた。

 柔らかそうな茶色い髪色のショートカットに、元の顔より吊り目の顔。

 ショート丈の柿色の着物。その下にスパッツの服装だった。


 「う……、ん! とても似合っている」

 猫の獣人なんて反則だろう!? 可愛いすぎる……!


 「レンは人間ヒューマンなのね。実物よりマッチョだけど」

 うふふ……! と美咲……。いや、サキは微笑んだ。もう少し筋肉をつけたいと思っている。

 「いいだろ? 好きにキャラを作って良いんだから」

 ちょっとムッとしてサキに言った。


 「大丈夫! 蓮太郎……、レンはそのままでもカッコいいよ」

 近寄ってきて俺にそう言ってくれた。気のせいか、いい香りがした。


 ピ――ッ、ゴトゴト。何か音声機に当たる音が、自分の耳に装着している音声機から聞こえた。

 『あ――、あ――。テスト、テスト。声は聞こえているでしょうか?』

 機械で変えたような声だった。


 『こちらネオ・日本国政府と共同開発した【ルミナス・カンパニー】のキング、……という者です。これからゲームを始めるにあたって説明をしていきます』


 「いよいよ始まるのね、レン」

 「ああ」

 俺とサキは離れないように隣へ立って説明を聞いた。


『まずは2チームへ別れて戦います。赤チームと黄チームでわかるように、ゼッケンをつけてもらいます』

 キング……? という人が説明すると、自分とサキの体にゼッケンが自動に着けられた。

 「赤チームだね」

 サキが着けられたゼッケンを見て言った。

 「だな」

 赤は目立つな……と思った。


 『ゼッケンのついた胸の辺りに、風船の代わりになるブローチが装着されます』

 「わっ!」

 手のひらサイズのドーム型ブローチが胸の所に着けられた。風船じゃないのか。


『その風船の代わりのブローチが割られたら、負けです』

 キングはサラリと言った。

『2チームに分かれていますが、とりあえずブローチを割られないようにしてください』

俺とサキはお互い顔をみて頷いた。


『今、あなた達がいる場所はそれぞれ離れています。始まったら入り乱れて競うことになります』

『ただし、大勢で1人をターゲットすることはタブーです』

『対戦は2対2、または1対1。これを守ってください。顔へ装着した画面にペアか、1人か知らせてくれます』

『随時、モニターで監視してますのでルール違反はすぐに分かります。ご注意してください』

『ルールを守れてない参加者は、直ちに強制退出となります』


 キングは一気にルールを説明した。モニターで観られているってことか。

『ルールや地図などは、いつでも顔へ装着したものの画面で確認できます』


 『では幸運を祈りますgood Luck! 始め!』


 VRMMO《【大江戸】》中から大きな歓声が聞こえてきた。




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