「準備はいいか? 美咲」
「うん」
10日後、ネオ・日本国政府主催の
VRMMO(仮想現実大規模多人数同時参加型オンラインゲーム)なので、自宅から参加できる。
美咲は、俺の部屋に来て参加する。
休日の最大6時間。ゲームの中にいることが出来る。当たり前だが食事や、トイレ休憩あり。
ただしトイレ休憩は、敵が近くにいないことが条件。
「じゃ、キャラ設定しよう」
「ええ」
人が左右上下、楽に手足を伸ばせるような細長いドーム状のVRMMO専用のブースに入って、ゲームを始める準備をする。
どこの家にも設置してある家電機器だ。
ゲーム開始は10時。今は9時。
1時間余裕をもって、キャラメイクしてから始めるつもり。美咲は、何の種族にするのか気になる。
「う――ん、迷っちゃう」
美咲はまだ種族が決められないようだ。無理もない。
用意されたキャラはかなり多い。細かくキャラメイクできるので、俺もかなり悩んで決めた。
「美咲、武器は何にした――?」
ブースから顔を出して聞いた。ヘッドセットでお互いに会話できるけれど、何となく。
昔は大きくて重いVRMMO専用のものだったが、今は眼鏡タイプの軽量タイプだから首に負担が少ない。
「私は接近戦が得意だから、ヌンチャクと
美咲は意外にも、空手・柔道など格闘技が得意の女子なのだ。気を抜くと男子の俺でも倒されてしまう。
「そうか。俺は、弓と剣にしよう」
武器は2つ持つことが出来る。ただし、体に攻撃してもダメージがないようになっている。
胸につけられた風船を攻撃するために、武器を使う。
「キャラメイク終わり! そろそろ、ゲームの中へ
「ああ」
時間も迫っていた。細かいことはゲームの中へ入ったからだ。
「ねえ。キャラネームは……。えっ、ちょっと! 待って!」
俺は美咲より先へ
目の前がまぶしくて目を閉じた。
『
感情のない機械的な音声で
「うわっ!」
そっとまぶたを開けるとそこは広大な、学校で習う江戸時代の町の風景が広がっていた。
木でできた家。固められた土の道路。真っすぐの道の向こうには、お城が見えている。
「すごいな……」
キャラメイクで和風の服が多かったのは、こういうことなのかと思った。
ゲームの中とはいえ、細かく再現されているのは凄い。昔、歴史授業で江戸時代の3D映像を見たものと同じだ。
このままじっくりと、見ていたいところだけど……。
「
聞き覚えのある声を聞いて振り向いた。頭の上にはキャラネームの【サキ】が見えた。
「美咲!」
「どう? 似合うかしら?」
美咲こと【サキ】は、猫の獣人種族になっていた。頭には猫耳、腰には猫のしっぽがついていた。
柔らかそうな茶色い髪色のショートカットに、元の顔より吊り目の顔。
ショート丈の柿色の着物。その下にスパッツの服装だった。
「う……、ん! とても似合っている」
猫の獣人なんて反則だろう!? 可愛いすぎる……!
「レンは
うふふ……! と美咲……。いや、サキは微笑んだ。もう少し筋肉をつけたいと思っている。
「いいだろ? 好きにキャラを作って良いんだから」
ちょっとムッとしてサキに言った。
「大丈夫! 蓮太郎……、レンはそのままでもカッコいいよ」
近寄ってきて俺にそう言ってくれた。気のせいか、いい香りがした。
ピ――ッ、ゴトゴト。何か音声機に当たる音が、自分の耳に装着している音声機から聞こえた。
『あ――、あ――。テスト、テスト。声は聞こえているでしょうか?』
機械で変えたような声だった。
『こちらネオ・日本国政府と共同開発した【ルミナス・カンパニー】のキング、……という者です。これからゲームを始めるにあたって説明をしていきます』
「いよいよ始まるのね、レン」
「ああ」
俺とサキは離れないように隣へ立って説明を聞いた。
『まずは2チームへ別れて戦います。赤チームと黄チームでわかるように、ゼッケンをつけてもらいます』
キング……? という人が説明すると、自分とサキの体にゼッケンが自動に着けられた。
「赤チームだね」
サキが着けられたゼッケンを見て言った。
「だな」
赤は目立つな……と思った。
『ゼッケンのついた胸の辺りに、風船の代わりになるブローチが装着されます』
「わっ!」
手のひらサイズのドーム型ブローチが胸の所に着けられた。風船じゃないのか。
『その風船の代わりのブローチが割られたら、負けです』
キングはサラリと言った。
『2チームに分かれていますが、とりあえずブローチを割られないようにしてください』
俺とサキはお互い顔をみて頷いた。
『今、あなた達がいる場所はそれぞれ離れています。始まったら入り乱れて競うことになります』
『ただし、大勢で1人をターゲットすることはタブーです』
『対戦は2対2、または1対1。これを守ってください。顔へ装着した画面にペアか、1人か知らせてくれます』
『随時、モニターで監視してますのでルール違反はすぐに分かります。ご注意してください』
『ルールを守れてない参加者は、直ちに強制退出となります』
キングは一気にルールを説明した。モニターで観られているってことか。
『ルールや地図などは、いつでも顔へ装着したものの画面で確認できます』
『では
VRMMO《【大江戸】》中から大きな歓声が聞こえてきた。