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第2話 結果と説明



 『年齢・参加資格・抽選の結果、風間 蓮太郎かざま れんたろう様 当選のお知らせ。詳しい参加方法は……』


 「えっ!? マジ?」


 ダメもとで応募してみた。

 それには、もしも優勝したらもらえる土地や賞金の使い道をアンケートに書かなければならなかった。


 昔と違って今は、ある出来事がきっかけで全世界の人は裕福になった。

 病気をしないお世話の簡単なペットロボが主流だが、今も変わらず生きている猫はペットとして大人気だ。

 ただ世話が出来ず、お世話を放棄してしまう人が増えてきている。


 そこで2000年代初期に人気のあった【猫カフェ】を復活させようとした。同時に、行き場のない猫を飼ってくれる里親を探す橋渡しをしたいと考えた。

 それは問題になっていて、どうすべきかお偉いさんたちで話し合いをされていた。

 俺の土地利用や賞金の使い道が良い案だったのだろうか? 

 どちらにしても、当選して参加できるようだ。


 「よかっ……「蓮太郎――――!」」


  俺の部屋のドアが、乱暴にバ――ン! と開けられた。ノックもない。

 トタトタ……! と部屋へ断りもなく入って来たのは隣に住む幼馴染の女子、青葉 美咲あおば みさきだ。

 誰もが振り返る美少女で、芸能事務所からスカウトの誘いがたくさん来ている。


 「おい、いつもドアをノックしろと……「蓮太郎は、当選した?」」

 人の言うことをきかない。あきらめて話を変えた。


 「ああ。当選した」

 VRMMO【大江戸】に応募した友達へ連絡しようとしていたところだった。

 「やった――! 一緒に参加できるね!」

 いきなり抱きついてきた美咲はハイテンションだ。


 「ちょっと離れろ……。えっ!? 美咲も当選した!?」

 「そうなの!」

 まさか美咲が応募して、当選するとは思っても見なかった。


 俺のレトロ携帯電話には「俺も当選した!」という連絡と、抽選に外れたが「頑張れ!」という応援の連絡の知らせる音が鳴りやまぬほど、たくさん来ていた。


「良かったな。……ほら、離れて」

 俺は美咲の両肩を掴んで離した。いくら幼馴染とはいえ、お互いもう18歳だ。小さい頃とは違う。

 「は――い」


 昔でいう大理石に似た新素材の床を歩いて、自動的に飲み物を作ってくれる装置の前へいった。

 「美咲は、ココアが良かったよな?」

 「うん」

 美咲に確認して、ネオ・アレクサへ注文する。


 「ネオ・アレクサ。コーヒーとココア、ホットで」

 ピッ! 

 『カシコマリマシタ!』

 今は声で命令すれば何でもやってくれる。レトロブームだけど、便利さはやめられない。


 「ほら、ココア」

 受け取って美咲にココアを渡してあげた。

 「ありがとう!」

 小さい頃から変わらないココア好きな美咲。高層総合マンションの家が隣同士の幼馴染。

 お互い家を行き来して遊んでいた。学校も同じ。


 「ん、美味しい」

 何も言わなくても、俺の部屋のソファーへ座ってココアを飲んでいる。真向かいにある一人用のソファーへ俺は座ってコーヒーを飲んだ。


 しばらくするとVRMMO【大江戸】の運営会社から詳しい説明が送られてきた。

 簡易的なヘッドセットをつけて美咲と一緒に説明を聞いた。


 「へえ。バージョン・1私達のゲームは、かくれんぼ&風船割ゲームだって。蓮太郎」

 美咲は説明を聞きながら俺に話しかけてきた。

 「かくれんぼ&風船割ゲームか……」


 「ん? 聞き逃したかも」

 機械的に流れてくる説明は、聞き逃してしまうことがある。

 「いつでも戻ってルールを聞けるよ」

 美咲に教えてあげた。


  聞いたルールは、ざっと説明するとこんな感じだ。


 ■ VRMMO【大江戸】 バージョン・1 ■

 ☆年齢 18歳から24歳まで。(当選者のみ)

 ☆無敵バージョン

  高い所から飛び降りても大丈夫。

 ☆種族を変えられる。

 ☆武器を選べる。

 ☆ペアを組んでよし。……その他、公平に遊べるよう細かいルールがあった。


 「……なるほど?」

 美咲はわかっているのか、わかってないのか曖昧な返事をした。

 「それで、美咲は誰と組むんだ?」

 俺は、女子同士でペアを組むと思った。


 「へっ!? 私とペアで参加するよね?」

 驚いた顔をして美咲は俺に言った。美咲とペア?

 「そうなのか? 俺はてっきり女子同士で組むのかと思った」

 コーヒーを飲みながら美咲に言った。


 「え――。ダメなの?」

 ソファーに座ってこちらを見て、泣きそうな顔をしていた。美咲のこういう顔に弱い。

 「ダメじゃない、けど」


 「何かあるの?」

 テーブルに両手をついて俺の方へ身を乗り出してきた。顔が近い。

 「俺と組んでいいのか? もっと違うやつとか……」

 美咲は、老若男女問わず好かれる。美少女だが優しいし性格もいい。俺よりほかのやつの方が……。

 「蓮太郎とペアを組みたい」


 「え。いいのか」

 美咲が頷くと、長い艶のある黒髪がサラリと流れた。

 「だって……。蓮太郎、ゲーム上手いでしょう!」

 なぜか顔を赤くして横を向いた。


 なんだ。ゲームの腕を買われたのか。

 「いいぞ。ペアを組もうぜ」

 俺は納得した。

 「ありがとう! 頑張ろうね、蓮太郎!」

 「おう!」

 美咲と俺は、手のひらを合わせてパチンと叩いた。美咲とペアになることを決めた。


 「参加するからには、優勝を狙うぞ」

 「もちろん!」



 ゲームは10日後、行われることになった。









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