電話に出るため、暁さんは、ベッドから降りて、部屋から出た。
私も急いで洋服に着替える。
そして、リビングへ向かうと…
暁さんは、真っ黒のスーツに着替えていた。
いつもラフに下ろしている黒髪は一つに結び、多分ワックスで固めてある。
拳銃の弾を確認して、スーツの内側に入れ、ナイフを腰に刺した。
「あか…つき…さん?」
ドコニイクノ…?
「夜宵、昨日は最高の夜だった。
それだけ…伝えておこうと思ったんだ。」
「なんか…それ…
最後みたいな…言い方…」
「俺は必ずあの海に帰って来る…
だから…
待ってろ。
あの最初に会った海で。」
「い、行かないで!」
私の瞳からは涙が溢れ落ちる。
「夜宵!
俺が約束破った事、あるか?」
私は首を横に振る。
「今度も、約束だ…
必ず帰って来るから…
それと…」
「それ…と…?」
「愛してる…」
そして、暁さんは出て行った。
次の日、ニュースで、大規模なヤクザ同士の抗争があったと流れた。
死者30人という文字に私の手は震えた。
残りは、逃げたか、警察に捕まったか…
数日後、私に荷物が届いた。
差し出し人は無く、小箱に鍵と地図が入っていた。
私は地図の通りに向かった。
ここは…
そう、あの海だ…
覚醒剤の取引きで、最初に会った…
そして、その港の側に、地図に記された場所があった。
私は閉まっているシャッターを鍵で開けた。
そこには、一面色とりどりの花が咲いていた。
これは…暁さんから私への…
涙で滲んで、花がよく見えなくなったけど、そこはたしかに、小さな花屋だった。
名前は『サンライズ』。
日が昇る、花屋…???