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第81話 あの海に…

電話に出るため、暁さんは、ベッドから降りて、部屋から出た。


私も急いで洋服に着替える。


そして、リビングへ向かうと…


暁さんは、真っ黒のスーツに着替えていた。


いつもラフに下ろしている黒髪は一つに結び、多分ワックスで固めてある。


拳銃の弾を確認して、スーツの内側に入れ、ナイフを腰に刺した。


「あか…つき…さん?」


ドコニイクノ…?


「夜宵、昨日は最高の夜だった。

それだけ…伝えておこうと思ったんだ。」


「なんか…それ…

最後みたいな…言い方…」


「俺は必ずあの海に帰って来る…

だから…


待ってろ。


あの最初に会った海で。」


「い、行かないで!」


私の瞳からは涙が溢れ落ちる。


「夜宵!

俺が約束破った事、あるか?」


私は首を横に振る。


「今度も、約束だ…


必ず帰って来るから…


それと…」


「それ…と…?」


「愛してる…」


そして、暁さんは出て行った。
















次の日、ニュースで、大規模なヤクザ同士の抗争があったと流れた。


死者30人という文字に私の手は震えた。


残りは、逃げたか、警察に捕まったか…


数日後、私に荷物が届いた。


差し出し人は無く、小箱に鍵と地図が入っていた。


私は地図の通りに向かった。













ここは…


そう、あの海だ…


覚醒剤の取引きで、最初に会った…


そして、その港の側に、地図に記された場所があった。


私は閉まっているシャッターを鍵で開けた。


そこには、一面色とりどりの花が咲いていた。


これは…暁さんから私への…


涙で滲んで、花がよく見えなくなったけど、そこはたしかに、小さな花屋だった。


名前は『サンライズ』。


日が昇る、花屋…???









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