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第2話 オッサン、レンタカーを借りる

「ええっと、この油圧ショベルを一台借りたいんですけど」


「はい! ユンボのレンタルですね!

 油圧ショベルの1日レンタルで1万6000円〜になります!」


 山をおり市街地に出た俺は、キャンピングカーを駐車場に止め。

 作業用の油圧ショベルをレンタルする。


「月額だと10万円か」


 店内のカウンターでメニューをパラパラと眺め。

 俺は自分の相棒を物色する。

 以前まで務めていた仕事の関係で、山の購入に殆ど全財産をつぎこんだとは言え。

 貯金は、まだまだあるので、値段は得には気にしない。


「じゃあ、とりあえず一月レンタルで」


 10万円をモゾモゾとバッグから取り出し、そのままカルトンの上に乗せて、身分証明書と共に提出する。


「はい! 確認が終わりましたので、そちらからお好きな油圧ショベルをお選びください」


 ニコリと微笑ましい笑みがカウンターで輝く。

 真横に差し出された手に視線を向ければ、カラフルな油圧ショベルの数々がズラリと並ぶ。


「じゃあ、これにしようかな」


 愛車に選んだのは、6tの油圧ショベル。

 緑では無難なので、ここはキリン柄を選んでみた。

 早速、重機に乗り込み、手前のシャッターから駐車場へ。

 キャンピングカーを借りた油圧シャベルのところに納車し、俺は早々に山へと帰還。

 市街地に設けられているレンタカー屋は、ちょうど山を降りて、すぐの場所にあるので。

 キャタピラーで舗装を痛めるような事も特にない。


「さぁーて! いっちょやるかー!」


 ログハウス建築の為に必要となる基礎作り。

 まずは手製のコンクリートを流し込む為にも、手頃な四角い穴を掘らなければならない。

 手当たり次第にガツガツと掘り進めること20分。

 良い感じに正方形の穴ができあがる。


「このぐらい出来れば充分か」


 重機から降りて仕上がり具合を確認すると、俺は用意しておいたコンクリートバイブレーターを使ってコンクリートを流し込む。

 コンクリートを流し込む機材と言えば、生コン車などが有名だが、手にして使う小型の物ならこれの出番だ。


「だー」


 振動音に合わせて声を出しつつ。

 正方形の穴にできたてのコンクリートをすべて流した。

 事前に計量しておいたので、ちょうどピッタリ。

 流し終えたばかりのコンクリートは、泡が立っていてデコボコなので、金ゴテを使って平らに地面をならしていく。

 ならし終えた地面の四隅に、先ほど切った5mの丸太をそれぞれ植え付け、足場は完成。 


 そして、この4本の足場の上に、今度は床材を接着していく予定だ。


「イメージしやすいのは、机かな?」


 大きな机を作ろうとしているのだ。

 机の足を固定しないと、机が動いてしまう。

 その為にセメントを固めたコンクリートが必要だった。

 けど、


「木材の規格が、いまいち合わない」


 周囲を雑木林に囲まれている為、木に困ることは一切ない。

 山一頭、丸々が俺の庭なので、伐採した物はすべて俺の所有物。

 しかし、このコンクリートを打設した真四角の足場に対して、一枚で床材になりえる広さが確保できない。


「どうするべきか……」


 考えていた所、腹が減って来たので、ひとまず昼飯にする。


「今日の昼飯は、やはり牛丼」


 と言いたい所だが、俺は敢えて昼飯を買い忘れ来た。

 何故って?

 せっかくこれから山ぐらしが始まるのだから、食事にしても出来る限り、自由気ままなDIYを楽しもうと言う訳だ。


「なので今日の昼飯は、無し」


 と言う訳にも、勿論いかない。


「腹が減っては、仕事はできん」


 山の中腹にあるゴルフ場のようなスペース。

 そのちょうど一番角で作業をしている訳だが。

 その隣には、川が流れていて、湖のような池まで存在している。

 冬になれば川の水は凍り、底を切り抜いてカワサギ釣りなんて事も可能になる。

 この山、値段は高いが、良い立地。


「ひとまず何かを釣ってみよう」


 ちょうど釣り竿を持って来ている。

 それに猫の『ミャア』が食べそうな餌と言えば、やはり川魚が定番メニュー。


「ここは、是が非でも何か作りたい」


 山ぐらしにおける自給自足生活。

 拠点作りのDIYもそうだが、食事を確保する為の釣りや散策も欠かせない。


「なに食べよっかな〜」


 何が釣れるかも分かったもんじゃないのに。

 俺は、キャンピングカーから、いそいそと持って来ていた釣り竿を取り出す。

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