「ええっと、この油圧ショベルを一台借りたいんですけど」
「はい! ユンボのレンタルですね!
油圧ショベルの1日レンタルで1万6000円〜になります!」
山をおり市街地に出た俺は、キャンピングカーを駐車場に止め。
作業用の油圧ショベルをレンタルする。
「月額だと10万円か」
店内のカウンターでメニューをパラパラと眺め。
俺は自分の相棒を物色する。
以前まで務めていた仕事の関係で、山の購入に殆ど全財産をつぎこんだとは言え。
貯金は、まだまだあるので、値段は得には気にしない。
「じゃあ、とりあえず一月レンタルで」
10万円をモゾモゾとバッグから取り出し、そのままカルトンの上に乗せて、身分証明書と共に提出する。
「はい! 確認が終わりましたので、そちらからお好きな油圧ショベルをお選びください」
ニコリと微笑ましい笑みがカウンターで輝く。
真横に差し出された手に視線を向ければ、カラフルな油圧ショベルの数々がズラリと並ぶ。
「じゃあ、これにしようかな」
愛車に選んだのは、6tの油圧ショベル。
緑では無難なので、ここはキリン柄を選んでみた。
早速、重機に乗り込み、手前のシャッターから駐車場へ。
キャンピングカーを借りた油圧シャベルのところに納車し、俺は早々に山へと帰還。
市街地に設けられているレンタカー屋は、ちょうど山を降りて、すぐの場所にあるので。
キャタピラーで舗装を痛めるような事も特にない。
「さぁーて! いっちょやるかー!」
ログハウス建築の為に必要となる基礎作り。
まずは手製のコンクリートを流し込む為にも、手頃な四角い穴を掘らなければならない。
手当たり次第にガツガツと掘り進めること20分。
良い感じに正方形の穴ができあがる。
「このぐらい出来れば充分か」
重機から降りて仕上がり具合を確認すると、俺は用意しておいたコンクリートバイブレーターを使ってコンクリートを流し込む。
コンクリートを流し込む機材と言えば、生コン車などが有名だが、手にして使う小型の物ならこれの出番だ。
「だー」
振動音に合わせて声を出しつつ。
正方形の穴にできたてのコンクリートをすべて流した。
事前に計量しておいたので、ちょうどピッタリ。
流し終えたばかりのコンクリートは、泡が立っていてデコボコなので、金ゴテを使って平らに地面をならしていく。
ならし終えた地面の四隅に、先ほど切った5mの丸太をそれぞれ植え付け、足場は完成。
そして、この4本の足場の上に、今度は床材を接着していく予定だ。
「イメージしやすいのは、机かな?」
大きな机を作ろうとしているのだ。
机の足を固定しないと、机が動いてしまう。
その為にセメントを固めたコンクリートが必要だった。
けど、
「木材の規格が、いまいち合わない」
周囲を雑木林に囲まれている為、木に困ることは一切ない。
山一頭、丸々が俺の庭なので、伐採した物はすべて俺の所有物。
しかし、このコンクリートを打設した真四角の足場に対して、一枚で床材になりえる広さが確保できない。
「どうするべきか……」
考えていた所、腹が減って来たので、ひとまず昼飯にする。
「今日の昼飯は、やはり牛丼」
と言いたい所だが、俺は敢えて昼飯を買い忘れ来た。
何故って?
せっかくこれから山ぐらしが始まるのだから、食事にしても出来る限り、自由気ままなDIYを楽しもうと言う訳だ。
「なので今日の昼飯は、無し」
と言う訳にも、勿論いかない。
「腹が減っては、仕事はできん」
山の中腹にあるゴルフ場のようなスペース。
そのちょうど一番角で作業をしている訳だが。
その隣には、川が流れていて、湖のような池まで存在している。
冬になれば川の水は凍り、底を切り抜いてカワサギ釣りなんて事も可能になる。
この山、値段は高いが、良い立地。
「ひとまず何かを釣ってみよう」
ちょうど釣り竿を持って来ている。
それに猫の『ミャア』が食べそうな餌と言えば、やはり川魚が定番メニュー。
「ここは、是が非でも何か作りたい」
山ぐらしにおける自給自足生活。
拠点作りのDIYもそうだが、食事を確保する為の釣りや散策も欠かせない。
「なに食べよっかな〜」
何が釣れるかも分かったもんじゃないのに。
俺は、キャンピングカーから、いそいそと持って来ていた釣り竿を取り出す。