パレット太郎
文芸・その他純文学
2025年10月28日
公開日
6,275字
連載中
ピアノの音は、祈りのように響いていた。
それが、誰かの心を救うものだと信じていた。
東京・半蔵門。
幼い理恵が、初めて鍵盤に触れたとき、
母・育代の人生もまた「音」に支配されていく。
才能、夢、家族、そして金。
小さな部屋の中で交錯する「幸福」の形は、
やがて音を立てて崩れていく。
音楽は、誰を救い、誰を狂わせるのか。
そして、「残響」の先にあるものとは…
ラフマニノフに始まり、マーラーで壊れ、
ショパンに終わる、母と娘の記録。
それは、天使のように純粋で、
人間のように汚れた音の物語。