裃左右
文芸・その他純文学
2025年10月31日
公開日
1,132字
完結済
夫に先立たれ、千曲の古家で、静かに余生を送る、望月珊瑚。
彼女の、唯一の楽しみは、月に一度の、老人クラブの朗読会だけだった。
そんなある夏の日、姪孫のヒナ-タが、遊びにやってくる。
天真爛漫なヒナタは、珊瑚が、心の奥底に、封印していた「過去」――かつて、女優として、舞台に立った時の、燃えるような、赤いドレスを、見つけ出してしまう。
「ばあちゃん、朗読発表会に、これ着て出なよ!」
無邪気なヒナタの言葉に、戸惑いながらも、珊瑚の、止まっていたはずの時間が、少しずつ、動き出す。
※第三回ひなた短編文学賞 応募作品