麦狼
歴史・時代日本歴史
2025年12月27日
公開日
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連載中
明治初期。
徳川の世が終わり、警察という制度すら形を成していない時代。
不平士族の怨嗟と、戦の死臭に引き寄せられ、
夜の東京には人ならざるもの――あやかしたちが跋扈していた。
上野戦争の夜。
無数の屍と狐火が浮かぶ戦場で、
人の魂を食わず、ただ涙を流す半妖の狐がいた。
名を、朔也という。
彼は、人であり、妖であり、
どちらにもなりきれぬ存在。
それでも彼は「人の側に立つ」ことを選ぶ。
その異端に目を留めたのが、
後に警視庁を創設する男・川路利良だった。