明治あやかし警察録
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あらすじ
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明治初期。 徳川の世が終わり、警察という制度すら形を成していない時代。 不平士族の怨嗟と、戦の死臭に引き寄せられ、 夜の東京には人ならざるもの――あやかしたちが跋扈していた。 上野戦争の夜。 無数の屍と狐火が浮かぶ戦場で、 人の魂を食わず、ただ涙を流す半妖の狐がいた。 名を、朔也という。 彼は、人であり、妖であり、 どちらにもなりきれぬ存在。 それでも彼は「人の側に立つ」ことを選ぶ。 その異端に目を留めたのが、 後に警視庁を創設する男・川路利良だった。閉じる
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作者のひとりごと作者のひとりごと2025-12-27 20:38ネオ・デビューネオ・デビュー2025-12-27 17:35創意工夫ありし者創意工夫ありし者
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十勝の真っ只中 北の大地で育って 気がつけば都会の整体師閉じる
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八雲立つ時計坂の管理人
八雲立つ時計坂の管理人 『八雲立つ 時計坂下宿 管理人』 民俗学を学ぶ大学生・八雲は、東京の外れ、標高の高い坂の上に建つ古い下宿―― 通称「時計坂下宿」の管理人を務めている。 だがこの下宿、ただの古家ではない。 家鳴り、化け猫、木の神、狸、狐、天狗、そして雨神。 人ならざるものたちが、当たり前のように集い、住み、食べ、騒ぐ場所だった。 八雲は霊感こそ強くないが、 見え、聞こえ、察してしまう男であり、 祖父譲りの民俗学の知識と、淡々とした生活力で、 神と妖怪の「日常」を受け入れている。 雨神である澪と共に暮らし、 食い意地の張ったリス神クヌギに振り回され、 台所番人の化け猫漱石に睨まれながら、 八雲は大学で民俗学を学び、レポートを書き、 そして――神々のいる日常を“観察”し続ける。 それは学問なのか、生活なのか、祀りなのか。 水は命である。 雨は空からの手紙である。 神とは、忘れられたときにこそ、静かに消える存在である。 これは、 神と人の境界に立つ青年と、 少し騒がしくて、少し優しい「非日常の日常」の物語。 第一話 八雲立つ 静かな晩だった。 提出用のレポートを書き終え、 八雲は机の上で用紙をとん、と揃える。 肩を大きく回し、息を吐いた。 「……終わった」 窓の外では、風がない。 遠くで街の音がかすかにするだけで、 時計坂下宿は、今のところ、驚くほど平和だった。 ――今のところ、だ。 「漱石。ちょっと悪い、降りてくれないか」 膝の上にずっしりとした重み。 化け猫の漱石が、ぴくりとも動かずに目だけを細める。 「……足がしびれそうなんだが」 「知らぬ」 即答だった。 八雲が苦笑した、そのとき。 窓の外を、ふわりと何かが横切った。 鳥ではない。 影の動きが、少し――軽すぎる。 「……来るな」 ぼそりと呟いた直後、 下宿のどこかで、とん、とんと柱が鳴った。 家鳴りだ。 それを合図にしたように、 空気がわずかに湿る。 井戸の方角から、 水の気配が、静かに満ちてくる。 「……澪か」 雨の神が、この家に戻ってきた合図だった。 八雲は立ち上がり、 しびれた足を軽く叩きながら、廊下へ向かう。 今日もまた、 人と神と妖怪が同じ屋根の下で暮らす