深窓のウロボロス――殺したい刑事と裁かれたい犯罪者
方舟
ミステリーサスペンス
2026年09月11日
公開日
6.5万字
完結済
犯罪を何より憎む俺が、よりにもよってその犯罪を「進化」させていた。
犯罪を憎むあまり、その世界に存在しない捜査技術を持ち込んだ刑事。
その結果、犯罪は歪んだ進化を遂げた。
そして、その進化を我がことのように狂喜する犯罪者がいた。
前世で最愛の恋人を奪われ、宿敵と共に果てた刑事「トウヤ・ケイジ」。
異世界へ転生した彼は、領主直属の捜査官として新たな人生を歩んでいた。
だが、命じられた秘匿調査の先で出会ったのは――
かつて自らの手で追い詰めたはずの男。天才犯罪者「レイ・タカハマ」。
監獄の奥底に座し、囚人すら従わせる「深窓のウロボロス」。
「やあ、待っていたよ」
再会の瞬間から、タカハマはケイジへの深い執着を見せる。
殺したい刑事と、犯罪に芸術を見る怪物。
最悪の相手と再会を果たしたケイジは、憎悪を抱えながらも、不可能犯罪の解決のため、タカハマと手を組むことになる。
彼らが生まれ落ちたこの世界は、捜査技術が確立されておらず、真実がたやすく捻じ曲げられる世界。
その中でケイジは自身の経験を生かし、様々な事件を解決していく。
しかしその先に待っていたのは、ケイジの目を逃れることを意図した犯罪の「進化」だった。
自分の存在が犯罪を進化させているという事実に絶望しながらも、犯罪者を追い続けるケイジ。
しかし、そんなケイジはさらに、とあるジレンマに陥る。
それは犯罪を追い続け、その心理をよく知るあまり、共鳴し、近づいていくという呪い。
「君はもう、こちら側に片足を踏み込んでいる」
嬉々としてささやくタカハマ。
「違う……!」
拒絶しながらも、タカハマの言葉を否定しきれないケイジ。
ケイジが憎むのは、犯罪か、その美しさか、それとも。
これは、犯罪を追うあまり、その深淵を覗き込んだ一人の男と。
その男を深淵へ引きずり込もうとする犯罪の怪物の、心理サスペンスである。