☆夜空に浮かぶ校舎で、私は名前を取り戻す(月曜日更新中)
乾為天女
現実世界現代ドラマ
2026年09月18日
公開日
5,938字
連載中
十三年前、優穂は高校二年生のときに作った旋律を「学校で以前から使われていた曲に似ている」と判断され、自分の作品として認められないまま母校を去った。
二十九歳になった彼女は、期限付きの音楽教師としてその学校へ戻る。そこで耳にしたのは、百周年記念行事のために使われる懐かしい旋律だった。
――それは、私が作った曲。
けれど資料に記されていたのは「作者不詳」。しかも旋律は、いつの間にか学校の“伝統”として扱われていた。
優穂は十三年前の記録を追い始める。古い放送音源、個人創作課題の受領票、三段階の手書き譜、創立祭の制作表、閉ざされた旧音楽準備室。そして、当時彼女の作品を編曲した教師・智栄の証言。
一つだけでは決定打にならない小さな記録を積み重ね、優穂は「誰かを悪者にする」のではなく、自分が作ったという事実と、失われた名前を取り戻そうとする。
十三年間、独り言でしか言えなかった言葉を、今度こそ人前で言うために。
「これは、私が作った曲」