あの日、義父を殴った義兄に、誰にも言えない恋をした
千両
恋愛現代恋愛
2026年10月28日
公開日
2.8万字
連載中
義父の視線が、日に日に怖くなっていく。
ぬめる触手のように、私の身体にまとわりついて離れない。
「気にしすぎよ」
母はそう言った。
だったら、どうして泣いているの?
答えを知ったのは、私の誕生日だった。
母は袖をまくり、煙草の焼け跡がいくつも残る腕を私に見せた。
「あの人が望むなら、一度だけ好きにさせてあげて。私が育ててあげた恩を返すと思って」
その瞬間、私の世界は音を立てて崩れ落ちた。
足元にぽっかりと口を開けたのは、底の見えない深い闇。
そこに落ちそうになるたび、私を受け止めてくれたのが、義兄の宗佑だった。
荒れ狂う海で、ようやくつかんだ一本の流木。
彼のそばでだけ、私は安心して息ができた。
宗佑自身も、誰かを守れるほど強かったわけじゃない。
それでも私は、その正義感と優しさに甘え、何度も彼の背中に逃げ込んだ。
彼は、私の救世主だった。
私の人生を救ってくれた、ヒーローだった。
なのに私は――
彼に災いをもたらす存在になってしまった。