夫は初恋のために結婚式から逃げた。事故で流産した私に届いたのは「もうすぐ帰る」だけ。私は300年続く造園名家に嫁いだ
月見里 椿
恋愛現代恋愛
2026年10月19日
公開日
2.7万字
連載中
結婚式当日、新郎は現れなかった。
苅谷夢子は白無垢姿のまま、60人の招待客で埋め尽くされた式場へ一人で足を踏み入れた。
同じ頃、夫の初恋の相手がSNSに投稿していた。
北海道の原野、四輪駆動車。そして、添えられた言葉は――「旧友を迎えに」。
その夜、夢子は病院で妊娠7週目だと判明した。しかも、流産の兆候があった。
夢子は苅谷亮介にメッセージを送り、電話もかけた。だが、夢子はとっくに亮介から着信拒否されていた。
数週間後、赤信号で停車していたとき、初恋の相手が再びSNSを更新した。
夕日の下、二人の影が重なり合っていた。
その日、夢子は交通事故に遭った。
手術を終えて目を覚ましたとき、お腹の子はもういなかった。スマートフォンに届いていたのは、夫からのたった一言。
「もうすぐ帰るよ」
夢子は短く返した。
「もう、いらない」
1か月後、亮介が帰ってきた。義母は結婚式をやり直そうと張り切っていた。
夢子はお茶を手に、リビングで告げた。
「離婚します」